新潟県弥彦村の春を告げる風物詩、湯かけまつりが9日、行われた。祈りを込めた神湯を載せた朱塗りの湯曳(ゆひ)き車を沿道の桜花が彩るまつり。桜はすでに葉桜になったうえに花冷えだったが、4年ぶりに通りを巡行する湯曳き車や威勢のいいかけ声が感染禍からの弥彦観光復活を象徴した。
弥彦公園にある弥彦温泉発祥の湯神社から神湯を受け、その神湯を青笹につけて沿道の人たちにはらいかけながらとともに町内を練り歩き、厄除開運や商売繁盛、弥彦観光の発展を祈願する。
弥彦観光協会が主催。感染防止のため2年続けて中止し、昨年は湯曳き車は出さずに弥彦神社に神湯の奉納だけ行った。ことしは4年ぶりに湯曳き車が復活し、一般の人が湯曳き車の綱を引くのに参加できない以外はほぼ本来の形で進行した。
湯曳き車は木遣(きや)りを歌ってから多目的施設「ヤホール」前を出発した。湯曳き車を運行を統制するのは、弥彦神社氏子青年会。ことし1月に新しく会長に就いた黒津一彦さん(35)が湯曳き者の先頭に立って指揮をとった。
「えんやー!」のかけ声で調子を合わせて弥彦神社氏子青年会や弥彦神社講中の人たちが湯曳き車の綱を引いた。綱は湯曳き車の前後にある。途中、合図で後ろの綱を引っぱって前の綱を引く人と綱引き状態になり、湯曳き車から神湯をばしゃばしゃとかける勇壮な場面が見どころだ。
途中で弥彦よさこい添弥のよさこいソーラン、弥彦芸妓の手踊り、弥彦神社氏子青年会の一宮甚句の踊りもあり、見物客を楽しませた。
弥彦神社では一の鳥居で弥彦山太鼓の演奏が出迎え、境内に乗り入れた湯曳き車は、階段の手前で2基のたるみこしに神湯を移し、木遣りを歌ってたるみこしをもみ、さらに拝殿前まで運んで再びたるみこしをもんだあと、参拝して終わった。
ことし2月に村長に就任した本間芳之村長は初めて湯曳き車を引いた。「とてもわくわくどきどきしてる。これからも観光シーズンに向けてみんなで頑張っていきたい」、綱を引くのは「結構、大変で力がいると思ったが、周りの子どもたちもすごく明るい元気な声だったので、逆に力、エネルギーをもらった」と笑顔だった。