居酒屋・レストランチェーン「ぜんていグループ」を展開する有限会社村将軍(渡邊久二代表取締役・新潟県加茂市芝野)は、創立35周年を記念して加茂市に20万円を寄付するとともに寄付金付きの季節限定ランチの販売を行って地元や客に恩返しする。
加茂市への寄付は24日、代表取締役の渡邊久二さん(72)とその長女で専務取締役の藤田里枝さん(47)が市役所を訪問。加茂市の児童福祉に役立ててほしいと、藤田明美市長にのし袋に包んだ20万円を手渡した。
寄付金付きの季節限定ランチは28日(金)から5月31日(水)まで行う。季節限定ランチは、居酒屋「旬彩創和ぜんてい」の西加茂、亀田、新潟LEXN、燕三条の4店が「旬の天ぷらとわかめ冷麺セット」(1,210円)など3品。「ぜんていの焼き肉うし公」が「特選ローストビーフ丼ZT35ランチ」(2,178円)など3品。「ぜんていのイタリアン VG 新津店」が「県産甘豚グリルと春野菜のアラビアータ生パスタランチセット」(1,848円)の計7品をラインナップする。
これらの売り上げの10%を各店の近くの「子ども食堂」に寄付する。合わせて応募用紙のアンケートに答えると抽選で1等「ぜんていお食事券5,000円分」などが当たる企画も行う。
加茂市役所へ寄付に訪れた渡邊さんは、藤田市長にこれまでの歩みを話した。加茂市に生まれ、県立燕工業高校電気科を卒業。運送会社で働く父が荷造りをする仕事をしていたワイヤロープなどを製造する会社で電気の保守の仕事に就いた。
夜勤は厳しく、半年で体重は10kgも減って55kgになったが、製造の仕事には就けず、1年で退職して上京。デザイナ−学園に通ったが、金が続かず退学して寿司店で働いたものの「東京じゃ、うだつが上がらない」とUターンしてサラリーマンになった。
それから何かやりたいと加茂駅前の空き店でサントリーウイスキーの角瓶とオールド専門で、それにつまみを出すスナック居酒屋のような商売を始めた。
となりのクリーニング店が空いたのでそこを借り、居酒屋チェーン店のフランチャイズに入ったが、加盟金なども負担になって倒産寸前になった。採用した板前にばかにされ、「畜生と思って」朝早く市に行ったりして一生懸命に勉強した。
1年半でフランチャイズをやめるとしだいに経営は上向いた。その2年後に三条市に2号店の出店を計画したが、家族などに反対されて断念。ただ、その前も加茂駅前にもう一店、接待しないスナックを出店している。
藤田さんは「わたしが中学生のとき。忙し時は洗い場に行って1日500円もらった」。渡邊さんも調理場に入った。
そんな矢先に原因がよくわからない病気で入院し、一時は人工呼吸器を着けて危篤状態になった。藤田さんは「私、お父さんのいない子どもになるんだと思った」が、奇跡的に一命を取り留めた。
その後、12店舗にまで店が増えた。今度は人手不足、感染症の影響で閉めざるを得ない店があり、単純に契約が終わった店もあるが、今は6店舗になった。
渡邊さんは「おかげさまで30数年やってこれたのも皆さんのおかげだし、これからもやはり何かしていきたいなと思っていたが、なかなかそのチャンスがなかった。それでちょうど35周年記念ということでやろうかなと。少しでも皆さんに恩返しができるかなと思った」と話した。
さらに「私も昔はやっぱり貧乏だったし、親父が朝から晩まで働いていたころは、馬車。牛や馬で寺泊まで配達した時代。あの頃は家へ帰っても誰もいなかった」と苦労を振り返った。
藤田さんも「父はまったく子育てに関わってこなかった。私たちのときにはできなかったことを少しでも今の未来ある子ども何かできれば」とこども食堂への寄付の意図を話し、藤田市長は「子ども関係の福祉に使わせていただきたい」と話していた。