新潟県三条市の山手の下田地域から見附市に抜ける道中で100世帯あまりが暮らす駒込地区。地元にある宝を見直し、地域外にアピールすることでここに暮らす人たちにも地元の魅力を知ってもらおうと、古民家を借りて山菜と野菜の直売所がオープンした。
古民家の屋号だった「そいんどん」が直売所の名称。大型連休に合わせて4月29日にオープンした。毎週日曜だけ午前9時開店で原則として午前中の営業。地元の8人が持ち寄った山菜や野菜を前庭のテントの下で販売し、家の中で手作り品の販売も少しある。
7日は山菜を中心にワラビ、ウド、ミズナ、セリ、クルミ、ネギなどが並んだ。どれも朝採りでみずみずしい。まだ宣伝もせず、道路わきにのぼり旗を立てているだけだが、小雨が降るなかでも客の切れ目がなく、地元の人もいれば通りすがりの人も訪れた。
直売所の代表は、駒込に住む自営業の笹岡大介さん(62)。58歳で運送会社の整備工場を早期退職した。仕事は午前6時半に家を出て帰ると午後11時過ぎ。「この地域のことがわからなかった。暮らしているけど、暮らしていなかった」。
朝から晩まで駒込で過ごすようになって現実を目の当たりにした。高齢者しかいない。1年に1軒ずつ家が減っていく。子どもが生まれない。ここに暮らしていると実感する。「何とかしんばね。ていうか、したいというか、誰かが何とかしんばね」と直思うようになった。
退職して1年たった3年前に、この古民家が空き家になった。古民家の持ち主の親族に古民家を何とかしてほしいと相談を持ちかけれた。笹岡さんは直売所を提案。ぜひやってほしいと言われた。名称は「そいんどん」を使ってほしいとだけ頼まれた。
仕事で県外へ出掛けて帰るたびに、地元の食べ物のおいしさを再確認する。「嫁とふだんからいいものを食べるいるんじゃないかという話になる。それをこの地域に人にもわかってほしかった」。
退職してから田んぼや畑を続けながら新しい仕事を始めて自身の生活の安定を待ち、地元の同級生や農業法人の立ち上げの仲間を誘った。古民家の中を片付けて掃除し、トイレも直し、3年越しで夢を実現した。
「うわーっ!すごーい!こんなミズナ初めて見た!って、ものすごく喜んで買ってったお客さんがいた」と客の反応に笹岡さんは自信を深める。「ものは絶対によそに負けない。絶対に満足してもらえる」と言い切る。
「この地区の人は、そんなものが金になる思っていない。売れて驚く。玄関の前に山菜を置いていていってくれて、売れんかったらぶちゃってくれの、という調子で」。ただ、継続には理念だけでは難しく、利益がついてこなければと考えている。
保健所の許可を取って手作りソーセージや薫製といった加工品も作って売ることができれば、通年営業も可能になると夢は広がる。「売れるとやっぱりうれしいんですよ。ぜひ一度、立ち寄ってみてほしい」と話している。
場所は国道289号の三条市役所下田庁舎の丁字路を入り、長堀簡易郵便局を過ぎて見附市方向へ約1.5km先を左に入ったところで、のぼり旗が目印。