新潟県三条市下田地域にある秘湯、越後長野温泉「嵐渓荘」(大竹啓五社長・三条市長野)。建物正面の緑風館が国登録有形文化財に登録されるなど、歴史文化の残る一軒宿だが、旅館・ホテル業界に限らず全国的に叫ばれる人手不足の影響は嵐渓荘も例外ではない。
大竹社長は「定年退職などでの従業員減少を見据え、2022年秋ごろから従業員募集を始めた。当初は2人の応募があって採用へつながったが、数年前に比べると求人に対する反応が少なく感じる」と話す。
「嵐渓荘はアクセスが良いとは言えないのも要因かもしれない。団塊世代の定年退職に加え、少子化に伴う労働人口の減少もさまざまな業界に人手不足をもたらしているのではないか」と続ける。
公式ホームページに写真付きの詳しい求人情報を掲載。応募者の勤務時間に対する要望を柔軟に受け入れて工夫しているが、慢性的な人手不足は続いている。
ハローワーク三条(落合直樹所長・三条市北入蔵)の調べによると、2022年度の宿泊・飲食業の求人数は三条市内で1,145件にのぼった。前年度と比べると実に57.3%も増加。感染禍以前の水準まで戻りつつある需要に供給が追い付かない。
落合所長(56)は「ハローワーク三条管内での24歳以下の求職者は185人で、45歳以上の620人と比べると非常に少ない。就職氷河期世代(現在のおよそ35歳〜54歳)の正社員登用や、正社員業務を細分化し、それぞれの業務につき高齢者や女性をパート職員として積極的に雇用することをハローワークとして働きかけていきたい」と話す。
40年以上にわたり新潟県内での人材派遣、職業紹介を行う株式会社スタッフエース(仲納林浩蔵代表取締役社長・三条市須頃2)の人材サービス事業部・五十嵐徹部長(49)は「求人票だけでは見えない、仕事風景や職場の雰囲気などを積極的に発信していくこと。間口を広げ、求職者側の判断材料を増やすことが今後、重要になってくるのではないか」と話した。積極的な情報開示は入社後のミスマッチ防止にもつながる。
「人材確保と同じくらい、入社後の定着が重要。採用した人材の定着が好循環を生み出す。改めて自社のウィークポイントを確認し、より良い環境を整えることも必要になる」と続けた。
現在、嵐渓荘は客室係の正社員1人を募集中。パート勤務の応募も受け付けている。アルバイト時代から勤続30年近くになる目黒満美さん(54)は「お客さまからの感謝の言葉や激励をいただくたびに、この仕事をしていてよかったとやりがいを感じる」と話す。
大竹社長は「特別なスキルは必要なく、地域愛を持って働くことのできる人材を募集したい」と応募を待っている。詳しい募集要項は公式ホームページの採用欄(https://www.rankei.com/recruit/)か、ハローワークで「観光開発嵐渓株式会社」と検索する。
(新倉茉優)