「地域の子どもたちに発表の場を」と新潟県田上町に地元企業が営業所の一部を開放して併設したギャラリー「和〜nagomi〜」がオープンした。「よそで同じようなものができる布石になれば」と地域の社会貢献の起爆剤になることも期待している。
ギャラリーを開設したのは電線加工を主な事業とする株式会社ツルマキ工業(鶴巻恵一郎社長・加茂市幸町1)。田上町吉田新田にある国道403号に面した大学前営業所の一部をギャラリーに充てて5月28日、オープンした。
建物は2004年に廃止された加茂信用金庫大学前支店。5年ほど前に買い取った。その1階部分、約100平方メートルうち3分の2を仕切りを設けてギャラリーに。残り3分の1は当面、そのまま事務所を残す。
オープン記念展は、6月28日まで加茂市の書道教室「下田(しもだ)書道会」の作品展を開いている。教室に通う加茂市と田上町の園児から高校1年生まで子どもたちが半紙に書いた作品約100点と、下田書道会で教える書家、下田逅絆(こうはん)さん(43)と下田彩水(さいすい)さん(40)の兄妹と下田一門の作品を展示している。
入り口付近には売店を併設した。ツルマキ工業の前身は和菓子店だった。食品部門があり、「さすが長物のツルマキさん」と良く言われる冷や麦などのめんやめんつゆを販売。会社のイベントなどで仕入れて販売してきた陶器類も扱っている。
ギャラリーの館長は、取締役部長の鶴巻諒平さん(36)。「構想は建物を買った当初からあったが、余力ができたときにやりたいと思っていた。感染症があったり本業が忙しく、ようやくできるようになった」と話す。
展示費も入場も無料。今回は書と合わせて鶴巻さんのひいおばあさんが作った紙人形と父が買った年代物の百人一首かるたも展示する。「まったくノウハウがなくギャラリーをスタートした。最大の特徴はおそらく手作り感で、そこを大事にしていきたい」。
ギャラリーの名称はいくつか案を出して社員の投票で決めた。ロゴも下田彩水さんにいくつか書いてもらってそのなかからやはり投票で決めたので、社員にも愛着がある。
次の企画展はまだ決まってない。子どもが中心であることは変わらないが、希望があればおとなの作品も展示したい考え。建物の2階は社員の休憩室などに使っているが、そこも美術教室などの会場に利用してもらうことも検討している。
鶴巻さんは加茂青年会議所に所属し、加茂商工会議所と田上商工会の会員。仕事以外の活動も忙しい。会社の外に目を向けることが多かったからか、「やはり今までずっと自社ばっかりできたが、ふと思い返せばやはり地域貢献も大事だなと思った。ここで子どもたちの成長も願ってギャラリーを開き、人が来てくれればうれしい」。
この取り組みが自社にとどまらず、地域へ広がっていく呼び水になることも願う。「よその会社も同じようなことをしてくれ、この地域であちこちにギャラリーができ、ひいては加茂市、田上町をぐるりと周遊してみんなで地域の子どもたちを育てるといった流れになれば。そうなったときに、このギャラリーが布石だったということになれば、こんなにうれしいことはない」と夢見ている。
平日は午前10時から午後4時まで、週末は不定期で開館、祝日は休館。問い合わせは電話「0256-47-1793」。