和歌山県の北西部、大阪府と境界を接する岩出市に生まれ育った前部屋公彦(まえべや・きみひこ)さん(47)がその人。徳島大学を卒業すると大阪にある放送機器を設計する会社に就職し、エンジニアとして働いた。
当時の上司が燕市にある業務用映像機器の企画などを行うアルビクス株式会社に転職。その上司に誘われて前部屋さんも30歳のときに同社に転職。それから17年になる。
同社に籍を置きながら昨年8月、May Corporation株式会社を立ち上げた。事業の柱は、ICTソリューション事業とコミュニティ事業の2つ。コミュニティ事業として取り組むのが、クラフトビールの製造販売だ。
醸造場所は、シェアオフィスでコワーキングスペースの「AOUSE BASE(アオウゼベース)」(燕市粟生津)内に置く。今は醸造を勉強、準備中で、7月中旬に酒類製造免許を取得予定。取得しだい仕込んで8月には販売を予定している。
燕市粟生津の無農薬無肥料の自然栽培米コシヒカリを麦とブレンド。ベルギー南部で昔から飲まれていたセゾン(Saison)と呼ばれるビアスタイルの柑橘系でスパイシーな香りの酵母を使う。
発売に先駆けて島根県のビールメーカーに醸造を委託して生産している。17日に燕市吉田西太田にオープンしたばかりの複合商業施設「ネクスト・ジェネレーション・タウン」に「AOUZE BREAWING」としてピザ店と共同出店し、450mlカップで700円、200mlカップで500円で販売している。
コメを使っているからなのか、飲みやすくくせのないすっきりした味わいに仕上がっていて、すでにリピーターも。瓶ビールはすでに燕市のデザイナーにデザインしてもらったラベルも完成し、330mlで600円ていどでの販売を予定する。
気候も文化も風土も異なる和歌山から新潟へ。持ち前の前向きな明るさもあるが、燕市民が温かく受け入れてくれた。。燕市・戸隠神社の春祭りで万灯を出す木場小路万灯組にも誘われて参加している。
「人間関係に恵まれていることに感謝している。よそ者に優しくしてくれて、この町にどう恩返ししようかと考えたときに、好きなビールを作ってみようと思った」と前部屋さんは話す。
コミュニティ事業の目的は、地域の課題を人とのつながりを通して解決、活性化し、相互扶助の精神で持続可能な地域づくりに貢献するとうたっている。
エンジニアがビールとはまったく畑違いに思えるが、前部屋さんは「やっぱりものづくりが好きで、根がエンジニアなので設計してそれに基づいて作るのは、電子の仕事と同じ。なんとか味を数値化してみたい」と、ビール作りもエンジニア的なアプローチで考える。
「人それぞれ好みのビールがで作れたらいい。自分はこういう味っていうレシピをつくって、オーダーメードみたいなビールを作るのが究極の夢」と目を輝かせる。
「まずは粟生津のコメを使ったビールをしってもらい、いろんなスタイルのビールをつくってクラフトビールのトレンドなんかも知ってほしい」。
地元の人たちが「ツバメビール」を片手に語り合う姿を頭に描いている。問い合わせはMay Corporation(080-8028-2999、https://www.may-corpo.jp)。