無差別殺事件や公共の場での放火事件などが増加するなか新潟県燕市は、いざというときに市役所に来庁した市民を守れるようにと28日、職員を対象に相手の動きを封じ込める「さすまた」を使った防犯訓練を行った。
2019年の京都アニメーション放火殺人事件や公共施設で灯油をまいて放火するといった事件などを契機に燕市では昨年4月にさすまた12本を市役所各階に設置した。さすまたは主に地元燕市で生産されたものを購入した。
あわせて防犯ブザー50個、消火ボール39個も購入して市役所に配備し、14万円近くかけて防犯用品を整備した。
しかし用意しただけではいざというときに効果的に使えないおそれがあり、昨年に続いてことしも職員を対象に防犯訓練を行った。
各課から集めた約30人の職員と市役所で職場体験中の中学生も参加。元自衛官の十河浩危機管理監が講師となり、犯人に見立てた単管パイプを組んでタイヤと鬼の顔を取り付けた物に対してさすまたを使う訓練をした。
一般にさすまたは先端に取り付けられたU字型の部分を相手に押しつけて動きを封じ込めるものとされている。それを防御とするなら、十河危機管理監の指導はより攻撃に近い。
とにかく相手の首をねらって力一杯、突く。さらに真上に上げて思い切り頭をたたく。接近したときは持ち手の側の先端を使って突く。
訓練の相手は人間ではないとわかっていても、自然と遠慮しがちに力を抑えてしまいがち。十河危機管理監は「突くときは速く、前に出したひじを伸ばして体重をかけて」とアドバイスし、練習を繰り返した。
十河危機管理監は、犯人をさすまたで確保しようとするには時間がかかり、年に1回の30分の訓練で確保はできず、確保しようとするから犯人に切られたり反撃されたりすると指摘する。
「犯人は確保しなければいい。燕市役所はとなりが警察署なので、5分もあれば警察官が来てくれるので5分間、なんとか間合いをとればいい。その5分間をさすまたで犯人が暴れ回ってお客さんに危害を加えないようにすればいいという訓練」と話していた。