新潟県燕三条地域の名だたる工場を開放する「燕三条 工場の祭典」。2013年のスタートからちょうど10年になることし、これまでで最大の変革の地元主導となるのに伴い、その受け皿となる任意団体「KOUBA(コウバ)」が3日、発足した。地元の若手経営者らが「燕三条を、工場(KOUBA)の聖地にする」をビジョンに地域産業の課題解決も目指す。2024度の一般社団法人化を予定する。
毎年秋に開かれている「燕三条 工場の祭典」は、これまで100社以上が参加し、来場者は累計25万人を超える。オープンファクトリーの先進地として注目を集める。
2019年にはドイツの「ジャーマン デザイン アワード」受賞、21年に企画した「燕三条 工場の祭典」展覧会は翌22年に世界三大デザイン賞のひとつ「Red Dot Design Award」でグランプリに輝くなど世界でも高く評価され、「燕三条」のブランド価値向上に貢献した。
第1回からこれまで全体監修を(株)メソッド(東京都渋谷区)の山田遊さんを中心としたクリエイティブチームが務めてきたが、ことしは10年の節目でもあり、クリエイティブコンサル事業のKATATA YOSHIHITO DESIGN OFFICE(新潟市)代表のプロダクトデザイナー堅田佳一さん(39)にバトンタッチした。
堅田さんは大阪府出身で燕市で企画・開発・デザイン部門に勤務した経験もあり、今は中川政七商店コンサルタントも務める。「Red dot design award」、「iF design award」、「Good design award」などの受賞歴も数多い。
そしてKOUBAは、(株)ドッツアンドラインズ(三条市)代表の齋藤和也さん(36)を代表、(株)side(三条市)代表の横山裕久さん(32)を事務局長に、7人の若手経営者らで5月1日に設立。その初仕事として「燕三条 工場の祭典」の運営を主催者の(公財)燕三条地場産業振興センターから委託を受ける。
職人の高齢化や後継者不足による廃業、働き手や需要の減少による経営の悪化など、さまざまな地域の産業が抱える問題があるが、技術を絶やさず、それぞれが抱える課題や目的に合わせたフォロー事業を展開し、燕三条地域の各社がその力を発揮できる環境をつくりだす。
そのために「まなぶ・つくる・めぐる・ひらく」をキーワードに4つの事業を展開していく。「まなぶ」は勉強会や講習会の教育事業、「つくる」はマッチング支援や製品開発のサポートのものづくり事業、「めぐる」は通年でツアーを企画する観光事業、「ひらく」は工場の活動や産地の取り組みを発信するイベント事業に取り組む。
代表の齋藤さんは2019年に溶接業を営みながら「燕三条 工場の祭典」の実行委員長に就き、20年に帯織駅に「EkiLb(エキラボ)帯織」を開設し、21年にドッツアンドラインズを起業。ことし2月には燕三条駅にビジネスマッチングの拠点を目指す地方創生型ワークプレイス「JRE Local Hub(ローカルハブ)燕三条」を開業した。
さらにはことしは10月26日から29日まで行われる「燕三条 工場の祭典」にぶつけて28日に三条市で来場者1万人を目指す初めての音楽フェス「Tsubamesanjo, Japan Fes.」をドッツアンドラインズとして旗を振った。飛ぶ鳥を落とす勢いのいわば「燕三条の時の人」だ。
3日行ったKOUBA設立の記者会見で齋藤さんは、ことしの「燕三条 工場の祭典」について「今まで培ってきた10年をしっかり引き継ぎながらも、新たな目的意識や取り組みが展開される。新たなイベントとして再スタートを切りたいとの思いで実行委員長を昨年に引き続き受けさせていただいた」と強い決意を示した。
「これまでのような1年に1回のお祭りを目指すのではない」、「年間通してやってきたことの成果発表を含めてやる場が『燕三条 工場の祭典』というイベントになると思っていただければ。そうでなければ、この団体を設立した意味もなく、『燕三条 工場の祭典』の位置づけも今まで通りでよかったんじゃないという話になる」とまで言い切った。
全体監修の堅田さんは「詳細は言えないが、これまでの形だったりこれまでのビジュアルも含めてそれが確実にすべて変わるのは間違いない。それはもう、期待していただきたいとしか今の段階では言えない」とし、;目指すゴールは、燕三条地域を世界中からクリエイティブが集まるまちにしたい」と思いを話した。