公益財団法人燕三条地場産業振興センター(新潟県三条市須頃1)が8月19日(土)、20日(日)の2日間、米国・ニューヨークの日系食品スーパーで燕三条製品を展示販売する燕三条フェア「Discover TSUBAME SANJO」に三条商工会議所青年部(結城靖博会長)は燕三条地域の企業をとりまとめて鍛冶製品の中心に展示販売し、合わせて鍛冶と造園を融合させたアート展示も行って燕三条をニューヨークに刻んでくる。
このスーパーはニューヨークのブルックリンにある「JAPAN Village(ジャパンビレッジ)」。岩室出身のオーナー、トニー・ヨシダさんが経営するスーパー3店舗のうちのひとつで、週末には約3万人が訪れる老舗スーパーだ。
店内2階に20×10メートルていどの広さのフェア会場を設営し、燕三条地域の企業7社と青年部が出展。青年部はそのスペースの半分以上を借りて、燕三条地域の20社近くの製品を展示販売する。
目玉となるのが、三条の“鍛冶”と植木の産地である三条市保内の“造園”の2つの伝統の職人技を融合させたアート展示。「共存と再興」をテーマに鉄の廃材と植物、盆栽などを組み合わせて空間を構成するインスタレーションになる。
鍛冶と造園はまったく違う文化だが、川の氾らんから生まれた点で共通する。鍛冶は川で砂鉄を取り、造園は同じ川で取った砂利や石を使う。鍛冶は山で切った木で木炭を作り、造園は山の木々を庭の景観に使う。共通点が多いのに交わることがなかったが両者をアートで融合。さらにプロジェクションマッピングによる演出もある。
包丁研ぎ体験、こけだま作り体験、ネームプレート販売の3つのワークショップを行うほか、ニューヨーク・ブルックリンの鍛冶専門学校「Nazz Forge」の訪問、視察も行う。
青年部は保内の庭師3人を含む13人で17日に渡米。到着した17日夜は日本領事館で滝沢亮三条市長と会長の結城靖博さん(39)が出席する晩さん会も予定されている。
19日に今回の海外事業について記者会見した。結城会長は、ことしは青年部発足20周年のメモリアルイヤーで、新型コロナウイルス感染症が収まってから初めての海外事業であり、「海外事業には非常に強い思い入れがある」と話した。
「初めてニューヨークという世界を代表する大都市で、燕三条の魅力を存分に発信する事業。新しい取り組みとして、保内の若い庭師をクローズアップして第二の西畠清順(著名な園芸家でプラントハンター)をこの保内から出したいと本気で思っている」と、保内の造園の認知が高まることに期待した。
アート展示の総合デザインを担当するのは、諸橋農園(下保内)3代目の諸橋良祐さん(33)。青年部燕三条発展委員会の委員長でもある。
諸橋さんは「100年以上の歴史のなかで、ひとつの空間を鍛冶と造園のふたつの産業が手を取り合って作ることは今までなかったこと。これをぜひ世界の中心であるニューヨークでできたらと思う」と意義を話した。
「青年部としてもニューヨークは大きな舞台になる。精一杯、頑張って帰って来たい。この事業を三条市内、保内に持ち帰って、向こうでの実績をこちらでも表現したい」と力を込めた。
結城会長は、これまでロンドンなどの海外事業では、三条製品の販売で価格が高いと言われるケースが多かったが、ニューヨークは物価高く、「我々の希望する価格以上の価格で販売をしたとしても、ニューヨークの皆さんにはそこまで手が届かないような高単価のものじゃないと思う。記録的な円安と物価高の今をチャンスととらえて多くの素晴らしい燕三条の製品、燕三条の名前をニューヨークに残していきたい」と思いを語った。