新潟県警燕署(清水文宏署長)は28日、特殊詐欺の被害を未然に防止した大光銀行吉田支店(平岩広志支店長・燕市吉田日之出町)と同支店職員2人に署長感謝状を贈ってお手柄に感謝した。
燕署で贈呈式を行い、清水署長から平岩支店長(49)と職員の熊倉元子さん(55)、納谷春美さん(62)それぞれに感謝状を手渡した。
6月14日の吉田支店。窓口の営業時間が過ぎてシャッターが閉まり、ATMからの当日振り込みがぎりぎり間に合う午後4時前だった。納谷さんは防犯カメラ越しに、ATMコーナーのソファーに座る高齢女性が、かばんから物を出したりしまったりする不審なようすに気づいた。
モニターを注視し、声をかけようか迷っているうちに、女性は携帯電話を取り出して電話をかけながらATMを操作し始めた。詐欺を疑った納谷さんは熊倉さんに相談した。
店舗の中からドアを開けてATMコーナーに入って声がけした。女性はATMを操作していたが、「どうかされたんですか?」と声をかけると、電話の向こうにもその声が聞こえたようで、すぐに電話が切れた。
女性に話を聞くと、市役所の人が還付金があり、きょう中に手続きをしないと今後、払った金を生きてる間、ずっと払い続けなければならないと言われたと明かした。
ほかにも犯人は、返金するために何十枚もの書類を書いてきょう、返金できるようにしたので、すぐに銀行に行き、4時になったらATMコーナーに行くように言い、女性はその話を信じ切っていた。
女性は家族の病気もあって心も弱くなっていたこともあり、ふだんならひっかかからない詐欺の話を信じてしまい、気持ちが弱っているところにもつけ込まれたようだ。
市役所職員をかたった犯人から、今度は銀行の人が電話をするので待つように言われ、女性はてっきりシャッターの中の銀行員と話しているものと思い込まされ、手口が巧妙化していた。
吉田支店が特殊詐欺の未然防止で感謝状を受けたのはこれが初めて。平岩支店長は「防げたのは彼女たち2人だけではなくて職員全員の防犯意識が高く、常日ごろからおやっ、という気づきを大事にしながら、お客さんに声掛けをしているから。そういったアンテナを高く、お客さんに目を向けていきたいし、お客さんの資産を守るという仕事もしっかりやっていきたい」と話した。
熊倉さんは「日ごろから多くの情報を与えていただいているおかげ。地域の皆さまのお役に立てて微力だが感謝している」、納谷さんは「お客さまに“声をかけたときに見つけてくださってありがとうございました。お父さんの大事なお金を取られなくてよかった”と言われたのがうれしかった」と役に立てたことを喜んでいた。
燕署管内のことしに入ってから6月末までの特殊詐欺被害はすべて還付金詐欺で4件発生し、被害総額は332万4000円で、ほぼ昨年並み。