包丁メーカーの藤次郎株式会社(藤田進代表取締役・新潟県燕市)は28日と8月1日の2日間に分けて県立巻高校(古川保校長・新潟市西蒲区巻)生活部を対象に「藤次郎オープンファクトリー」(燕市吉田東栄町)で研ぎ直し講習会を開き、部員の高校生から包丁研ぎを体験してもらっている。
生活部は家庭科部のような部活動で、調理時実習などの活動を行っている。部員は1年生と2年生が18人ずつの36人で、28日は1年生、1日は2年生を対象に講習会を開き、28日は希望した部員のうち体調を崩してキャンセルした生徒もあり、5人が参加した。
オープンファクトリーを見学してから引率の教諭3人も一緒に持参のエプロンを着け、生活部で使っている藤次郎の包丁を研いだ。
作業は滑らせやすく摩擦熱を防ぐために砥石(といし)を水に浸すことから始め、荒砥石で研いでから、より粒子の小さい中砥石と、2種類の砥石で研いだ。
包丁は刃を手前に向けて持ち、砥石に対して45度になるよう固定。刃が砥石に対して10〜15度の角度で当たるように、みねの方を7〜10ミリ持ち上げる。角度を一定に保つために、みねに取り付ける同社の「TOGRIP」を使った。
研いでいる面の反対側にバリが出るまで研いだら、最後に新聞紙のこすってバリを落として完成。あらためてジャガイモを切ると力を入れなくてもすっと包丁が入り、「すごーい!」、「えー!、めちゃ切れる!」と新品のような切れ味がよみがえり、驚いていた。
部員のひとりは、「研いだことがなかったので、すごく新鮮だったけど、夢中になっちゃって楽しかった。バリががさわってもあまりわからなくて難しかった。切れ味は全然、違った。すごく薄く切れる。すっと包丁が入った。家にも砥石があったらやってみようと思う」と研ぎ直しの効果を実感していた。
部員を指導したのは、2017年に「つばめ輝く女性賞」を受賞した職人の甲田清香さん。甲田さんは「研ぐ道具をそろえるのは大変かもしれないけど、百円ショップにも包丁の砥石が売っていてトライできる。きょうはせっかく来てもらったので、家でも研いでくれたらうれしい」とこの日だけに終わらないことを願った。
藤次郎の高校生を対象にした研ぎ直し講習会は初めて。藤次郎ナイフギャラリーWEB事業部の小林史子さん(47)の長男が生活部の部員なのがきっかけだった。しかも生活部では藤次郎の包丁も使っていると聞いて巻高校に研ぎ直し講習会を提案した。
生活部の担当教諭は、「校内で相談して世界の藤次郎は有名な企業であり、ぜひ見学させてもらって勉強を兼ねて地域貢献もしたいと思った」と言い、ふたつ返事で開講が決まった。
小林さんは「包丁を売るのが仕事ですが、作りっぱなしではなく、SDGsの観点からも研ぎ直して長く使ってほしいと思った」と言い、「職人のなり手が昔より少なくなり、いろんな学校から仕事を見てほしいし、刃物職人は世界から注目を集めている」と話していた。