新潟県燕市の燕市産業史料館では、18日(月・祝)まで開いている企画展「クプルムの花嫁のセカイ展〜おかわり〜」の最後の関連イベントとして、10日(日)午後2時から燕市・戸隠神社の春季祭礼で披露される万灯を実演。木場小路万灯組と横町万灯組が17年ぶりの共演を果たした。
企画展は、2020年から漫画誌『ハルタ』(KADOKAWA刊)に連載されている燕市を舞台にした鎚起銅器職人が主人公の漫画『クプルムの花嫁』の複製原画展。同史料館開館50周年を記念して開かれている。
これまで行った関連イベントの最後を飾る万灯実演は、『クプルムの花嫁』4巻で主人公のヒロイン「しいな」が万灯の踊り子になった回想シーンが描かれているのにちなみ、史料館で万灯を披露してもらうことにした。
万灯は、春祭りで木場小路万灯組と横町万灯保存会の2つの万灯組が万灯を出して氏子町内を回る。それぞれ小学生の踊り子が「伊勢音頭」にあわせた踊りを門付けし、通りや戸隠神社で踊る。
祭りではかつて両万灯組が接近してけんかになったこともある。両万灯の間には超えてはならない境界としてサカキを置くのが習わしだが、近年は友好的に運行している。とはいえ混じり合うことはなく、2006年に燕市の合併を記念した行事で共演して以来、実に17年ぶりに同じ場所で共演した。
万灯実演はそれぞれの万灯組が若連中約30人、踊り子は本来の半分の6人で中庭で順番に万灯を披露した。若連中は笛や太鼓を演奏し、「伊勢音頭」に合わせて扇子を振った。木場小路万灯組は男踊り、横町万灯保存会は女踊りと呼ばれるように踊りは異なり、衣装も違いがある。
5月の春祭りは寒いことも多いが、この日は残暑が厳しく、若連中も踊り子もたちまち汗びっしょり。会場では万灯組の家族や来館者など100人以上が見学に訪れた。若連中の「わっしょい!」のかけ声も威勢良く、季節外れの万灯を堪能した。
県外から訪れた人もいて、万灯実演があるとは知らずに企画展の鑑賞に東京から訪れた九州出身の男性は、「ふるさとにもこうした祭りがないので、とても興味深く見ることができた」と、『クプルムの花嫁』の万灯のシーンと重ねて万灯の実演を目の当たりにできた幸運を喜んでいた。
木場小路万灯組の清水守之総代(36)は、「お互いの万灯がひとつになってやるのが今の時代、衝撃的なものだったったし、新鮮なもので、こういう機会を徐々に増やしていければ」。横町万灯保存会の土田浩之総代(50)は「とても暑かったんですが、頑張りました。本当なら早く祭りが来ないかなと待たされるのが、中ごろにこういうのがあるのは来年がますます楽しみなった」とそれぞれ祭りの奉納とは違った手応えを感じていた。