株式会社大湊文吉商店(大湊陽輔代表取締役・新潟県加茂市秋房)は、同社が製造する「加茂屏風」が新潟県伝統工芸品に指定されたの記念して12日、加茂市に加茂屏風1隻を寄付した。
寄付した加茂屏風は、縦90×横180センチの3尺4曲の金屏風。日本美術院特待だった番場春雄さん(1910-97)に師事した1928年生まれの加茂市出身の日本画家、番場孤舟さんの作品「秋草」。金地に秋の草花を描いた華やかであると同時に上品で落ち着きのある作品だ。
12日は大湊文吉商店代表取締役の大湊陽輔さん(61)が加茂市役所を訪れ、藤田明美市長に寄付目録を手渡し、作品はひとまず応接室に飾った。
加茂屏風は1930年(昭和5)から加茂市内で製造され、桐たんすの製造などにより培われた木材加工の技術や加茂紙などの地域資源が活用され、産地を代表する工芸品になった。
新潟県は昨年、創設した新潟県伝統工芸品の第3回指定品目としてことし7月、「加茂屏風」を指定した。指定品目はこれで15品目となった。
今回の寄付は大湊文吉商店が4点の加茂屏風を用意して、そのなかから1点を加茂市に選んでもらって寄付した。藤田市長は選ぶのが難しかくだいぶ悩んだと話した。
「まず描かれてる花が好きだったのと、画面の周りを飾る緞子(どんす)もすばらしいと思った」、「加茂屏風の伝統的な技術を世界にもPRできるように頑張っていきたい」と話した。
大湊さんは、加茂の産業は地元の青海神社の宮大工から始まり、全盛期は屏風を作る会社が11社を数えたことなどの歴史を振り返った。今でも全国の屏風の9割が加茂で生産されており、「わたしがいなくなっても加茂屏風の技術が残ってくれればうれしい」と話していた。