新潟交通電車線にあった旧月潟駅(新潟市南区月潟)で保存されている通称「かぼちゃ電車」の乗車体験イベント「走れ!かぼちゃ電車」が昨年に続いて24日行われ、発売わずか5分で完売したプラチナチケットをゲットした360人が四半世紀前まで運行されていた懐かしい電車の走行を体感した。
新潟交通電車線は、1933年(昭和8)に開通し、新潟市の白山前駅と燕市の燕駅間を36.1kmを結び、「電鉄」と呼ばれて親しまれた。大河津分水の通水で中ノ口川の水位が下がったことなどで舟運が困難になったため、その代替として建設されたため、ほとんどの区間が中ノ口川左岸にレールが敷かれた。
旧月潟駅も中ノ口川左岸に位置する。1999年に廃線になると、旧月潟駅に車体を上が黄、下が緑に塗り分けられたことから「かぼちゃ電車」と呼ばれた車両3両を保存することになった。「かぼちゃ電車保存会」(平田翼会長)が冬囲いやさびていく車両の補修などの維持管理を続けている。
約120mのレールが残っている。さすがに車両のモーターで走る自走はかなわないが、車両前に車両移動機「アント」を接続して押し引きして「モハ11号電車」のかぼちゃ電車を走らせる日を夢見ていて昨年、初めてその夢を実現させた。
昨年の参加申し込みはあっと言う間で定員に達した。ことしは2年目なので申し込みが減るのではという読みもあったが、ふたを開けてみれば昨年以上に申し込みが殺到し、わずか5分でチケットは完売。キャンセル待ちが千人以上にのぼった。
ことしは月潟地区で1年で最大のイベント、「月潟大道芸フェスティバル」の開催日にあわせた。大道芸を見に来た人にもかぼちゃ電車を見てほしい、かぼちゃ電車の乗車体験に来た人にはその前後に大道芸を楽しんでほしいと相乗効果をねらった。
体験乗車の走行距離は約50m。参加者には硬券の記念乗車券を発行。当時の制服などを着た保存会会員は、改札鋏をカチカチリズミカルに鳴らしながらきっぷにはさみを入れたり、駅構内や車内にアナウンスを流したり、車掌を務めたり。昔と変わらない大きな警笛の音が響くと信号機が赤から青に変わってかぼちゃ電車が発車した。
走る速度は人が歩くていどで片道1分足らず。しかも自走していないが、車内からは車窓を流れる風景や車内を流れる秋の風、ゴトゴトという音や振動を体感すると、本当にかぼちゃ電車が走っている感覚を味わうことができた。
ひとりで電車に乗って出掛ける鉄道マニア、上越市の春日小6年・永野駿さん(12)は母りえさんと一緒に体験乗車した。駿さんは「自分が生まれる前に廃止されたけど、今でもしっかり整備されて安全にしっかり乗れてすごいと思いました。乗車できてすごくうれしかった。保存会の皆さんありがとうございました」と感激していた。
かぼちゃ電車愛が高じてついに旧月潟駅の目と鼻の先に移り住んだかぼちゃ電車保存会会長の自営業平田翼さん(31)は2年目なので1年目ほどの盛り上がりはないのかなと思ったが、始めてみると去年以上に短い時間で切符が売り切れてしまって多くの人に来てもらえてびっくりし、うれしく思っている」と喜び、県外からの参加が多かったことにも驚いていた。
この1年ほどで会員が数人増えて約40人になった。「鉄道路線は廃止されてしまったが、地域を支えたものとして、地域の記憶を語り継ぐものとして将来的にも長く愛されるものになったらいい」と願っていた。