タケノコの産地で知られる新潟県田上町。地域課題を魅力に変えるアートプロジェクト「たがみバンブーブー」に続き、今度は放置竹林のタケを食材に生かそうと「道の駅たがみ」(馬場大輔駅長・田上町原ヶ崎新田)は、田上で採ったタケを使ったメンマを開発した。「道の駅たがみ」3周年祭が始まる28日(土)、「たがみめんまラーメン」(900円)300食と「たがみめんま」の「辣油(ラー油)」と「醤油(しょうゆ)&黒胡椒(コショウ)」(各600円)を300個ずつ、数量限定で発売する。「邪魔者扱いするものがお金になる仕組み。それで竹林もきれいになる」と新たな循環を生み出した。
一般的なメンマは、最適とされる麻竹(マチク)が使われるが、「たがみめんま」は田上の竹林に生える孟宗竹(モウソウチク)を使う。
タケは穂先が柔らかく、根元が固い。使いやすい真ん中の胴の部分を使ったメンマは「たがみめんまラーメン」に。めんが見えなくなるほどたっぷりと「たがみめんま」をトッピングする。一般的な中国産のメンマに比べて繊維質が少なく、歯応えはやわらかくシャキシャキした印象。味付けは控えめで、よりタケのもつ風味を味わえる。
固いタケの根元は小さなさいの目に切って「たがみめんま」の「辣油」に。ネギ、ショウガ、ニンニク、からし、しょうゆ、砂糖、かつお節などさまざまな材料を組み合わせたぜいたくな味付けで、ご飯も進む。
柔らかいタケの穂先は短冊に切って「醤油&黒胡椒」に。しょうゆ、ごま油、黒胡椒、削り節、煮干しなどを使い、酒のつまみにも打ってつけだ。いずれも内容量は100g。カレー味やペペロンチーノ味なども試作したなかから、この2種類を商品化した。
田上町には東京ドーム36個分にも当たる17ヘクタールもの竹林が存在する。しかし、社会環境の変化や少子高齢化で放置竹林や廃棄竹問題などの課題がある。アートを通してこの問題の解決と魅力発信を地域とともにつくりあげようと昨年、田上町商工会青年部が中心となって初めてのアートプロジェクト「たがみバンブーブー」に取り組んだ。
廃棄竹で竹あかりを制作し、竹林を町内に飾り、ライトアップした。想像をはるかに超える2万5千人も来場者を集めた。竹アート作品はすべて竹炭と竹チップにして竹林に返したり、農地の土壌改良に活用したり。竹林環境の改善を推進する循環型の仕組みが完成した。
しかし、それで十分ではない。「もうひとつ大きいプロジェクトを動かさないと竹林維持はできない」(馬場駅長)と考えた。そこで「食」のテーマで模索し、メンマにたどり着いた。昨年秋のフードショーで湯田上温泉の「ホテル小柳」の野澤隆義社長が純国産メンマ作りに取り組む富山県上市町の株式会社ティー・ツリー・コミュニケーションズと出会った。田上でも教えてほしいと頼み、快諾してもらった。
ことし5月に「道の駅たがみ」のスタッフとタケノコを生産する地元農家とティー・ツリー・コミュニケーションズへ出向いてメンマ加工の指導を受けた。帰ってすぐにメンマ作りに取りかかった。長さ2メートル前後のタケを560kg、集めた。意外にメンマに使える部分は少なく、使えたのはそのうち25%ほどの150kg足らず。5月に元JAの加工場で加工に取りかかった。
タケの皮をむき、使えない部分は切って除き、柔らかい穂先は30分、それ以外は1時間、ゆでたら塩漬けに。あとは発酵して待つだけ。4カ月後の9月中旬に塩出し、味付けをして完成した。
開発のリーダーはホテル小柳の顧問で元料理長の小柳君夫さん(68)。「本当に食べられるものができるのかと思ったけど、これがまたおいしい。収穫も楽だしいいことずくめ。想像以上にうまくいき、来年はもっとおいしくなる」と出来栄えに大満足だ。
馬場駅長は「ことしは非常に数が少なく、道の駅だけの販売になるが、まずはスタートの年として皆さんに知っていただきたい」。全国で展開されている「純国産めんまプロジェクト」にも参加した。「来年の春は製造と販売計画を立てて、たがみバンブーブーと合わせて発信していきたい」と意気込む。
タケノコは豊作の表年と不作の裏年が交互に繰り返される。ことしは裏年だったが、来年は表年。来年はことしをはるかに上回る「たがみめんま」の製造が期待できる。
28日は「たがみめんまラーメン」が午前10時から販売、「たがみめんま」は午前9時半から販売。いずれもなくなりしだい終了。問い合わせは「道の駅たがみ」(0256-47-0661)。