国内にはわずか4台しか残っていない「幻のピアノ」、フランス・エラール社製のピアノ。そのうちの1台、新潟県三条市の県立三条東高校に眠っていた1930年に製造されたエラールのフルコンサート用グランドピアノの修復が完了し、23日、三条市図書館等複合施設「まちやま」でそのお披露目コンサートが開かれた。
このピアノは93年前、三条東高校の前身、三条高等女学校の時代に当時の同窓会などが費用を出し合って購入した。
鍵盤も下がったまま動かないような状態になっていたが、NPO法人燕三条エラール推進委員会を組織し、地元の企業や団体から資金的な援助も受け、2年半かけけて分解修理、オーバーホールした。
コンサートのチケットは完売し、220人が来場した。エラールの伴奏で女学校時代の卒業生が旧校歌を合唱して幕を開け、続いて三条東高卒業生がエラールと三条東高吹奏楽部有志の伴奏で今の校歌を合唱した。
国立音大大学院卒ピアノ専攻を首席で修了したピアニスト三好優美子さんがデュランの「ワルツ第1番」やリストの「ラ・カンパネラ」、さらに加茂市出身で国立音大声楽科卒で同大学院修了のメゾソプラノ押見朋子さんがピアノ伴奏でショパンの「願い」などを披露し、大きな拍手でわいた。
途中でNPO法人燕三条エラール推進委員会のオペラ歌手・永桶康子さんは、エラール修復の道のりなどを紹介し、エラールの重厚感やきらめき、倍音のふくよかさを感じてほしいと求めた。
「これからは世界中のすばらしい演奏者がこのピアノを弾きに来てくれることになる。この地域の皆さまに愛されるピアノとなるよう約束する」と話した。
たっぷりとエラールの音色を聴かせてくれた三好さんは、「ここであるっていう芯を自身がもっているので、私がこう弾きたいというタッチで弾くと、割と空振りをしてしまうところがある。優しくていねいに何か要求してくれるところがあり、なるほどこうやって音楽をつくるんだと感じる。鍵盤を弾くというよりも、エラールの独特な響きがそこにあって、アンティークな、ふくよかな、倍音なのか低音を弾くと乱反射するような、ピアノはオーケストラの役割をを表す楽器なんだっていう、ピアノ中のストラディバリウスみたいなイメージがある」と評した。
言い換えると現代のピアノと比べてくせがあるかもしれないが、「それを理解して弾いたら、すごくすてきなひとときを教えてくれるピアノ。ちょっとうまく弾けないときは、自分からピアノに寄り添って、弾きにくいって思わずに、自分の方を柔軟に変えていくと、自分の引き出しも増えますし、そこで何か、また新たな気づきとか思うの喜びをいっぱい教えてもらえるので、この出会いにとにかく感謝している」話していた。
このエラールは「まちやま」に設置し、市民への貸し出しなども行っていく計画だ。