築85年ほどになる新潟県三条市にある会社の土蔵だった建物で17日、ウエディングが行われた。内部の装飾をキャンドルアーティストのキャンドル・ジュンさん(49)をはじめフジロックなどの装飾を手がけるクルーが担当し、1日限りのロマンチックなバンケットホールに生まれ変わった。
この建物は五十嵐川左岸側の御蔵橋たもとの土手下、三条市西四日町1にある。3つの蔵を内包した木造の覆屋に覆われたような構造で、延べ床面積は約940メートル。蔵の入り口は天井が高さ約5メートルある土間でつながる。
昭和13年(1938)に建築許可申請が出されており、かつて金物、染物と並ぶ三条の三大産業だった足袋を保管する倉庫に使われたが50年以上、ほとんど使われてこなかった。
老朽化から取り壊しの話が出ていたところ、待ったをかけたのが2021年に設立した産業支援やコンサルを手がける株式会社side(サイド)=三条市東裏館2=の代表取締役、横山裕久さん(32)。「歴史的な建造物でいい建物と思っていた」と昨年、土地と建物を取得した。
とくに活用方法のあてはなかった。「とにかく壊したくない、残さなきゃと思った」。オフィスを置くこともなく、何も使っていなかった。
そこへ結婚式場ではない、三条らしいおもしろい会場はないかと探していたカップルの相談に乗っていた齊藤巧さん(47)=三条市=がこのウエディングを提案した。齊藤さんは社団法人燕三条空き家活用プロジェクトの代表理事でリフォームを中心とした建築業を営む。
土間に設置した長いテーブルにはずらりと並んだキャンドルの火が揺れた。齊藤さんはキャンドル・ジュンさんが代表を務めるラブフォーニッポンの理事、新潟支部長を務める。キャンドル・ジュンさんは「福の島会」を結成して三条凧合戦に参加しているつがなりもある。
木の柱や天井の木造の骨組みにシャンデリアが下がる幻想的な空間に生まれ変わった。土蔵には飲食ブースを設け、バンド演奏も行われ、約150人がウエディングを祝った。
横山さんは「こんなに明るい感じでにぎわって、あらためていい建物だと思った。たくさんの人に知ってもらい、土蔵を通じて交流してほしいし、レンタル的なこともやっていきたい」。
まだ具体的なことは決めていないが、「いずれは、ものづくりの発信の場にしていきたい」と構想を練っている。