ものづくりのまち新潟県三条市を支える三条商工会議所(兼古耕一会頭)は15日、ジオ・ワールドビップで会員新春の集いを開いた。4年ぶりの通常開催で出席者を昨年の1社1人からことしは1社2人までとしたため、昨年の214人の1.5 倍、341人が出席。昨年はなかったアトラクションも復活し、盛会だった。
能登半島地震の犠牲者に黙とうを捧げて開会し、兼古会頭が年頭のあいさつ。兼古会頭は4年ぶりの通常開催を喜んだ。ことしも不透明な状況が続くが、とくに深刻な課題は労働力不足の慢性化で、「今までの景況感や業績に左右される単なる人手不足という概念ではなく、そもそも労働者の人口減少による構造的な労働力不足であり、簡単には解決できません」と危機感を示した。
一発逆転のような解決策はないが、発想の転換が必要で、ことしは物流や建設業界の2024年問題が現実になる。この地域は休日が少ないと誤解を招きかねなかった産業カレンダーをことしから廃止した。「とくにことしは三条市立大学の1期生の就職活動が本格的に始まる。数多くの学生から目を向けてもらえるような会社経営を」と求めた。
離職や休職する社員を減らすための社員の健康を守る取り組みも必要で、春には済生会新潟県央基幹病院が開院して安心してこの地域で生活し、仕事を続けることができる環境も整うので、社員を大切にするよう求めた。
業務効率化のため、デジタル化やDX化をサポートする会員企業も多いので、外部ブレーンとして相談をしてほしいと呼びかけた。働き方改革や多様な人材の活躍を進めることも必要で、昨年は三条商工会議所女性会が誕生。「女性など多様な人材のパワーを積極的に活用してまいりましょう」。
課題の多い1年になると思うが、「さまざまな課題に対応するための取り組みをしっかりと後押しし、その役割を果たしていく」。
ことし4月には紙幣のデザインが一新され、新1万円札の顔になる商工会議所の生みの親と言われる渋沢栄一は、逆境のときこそ力を尽くすと言ったことを紹介した。「われわれ会社経営に携わる者は、社員とその家族、ひいては地域経済を守るという使命もあり、どんな局面に立たされようとも決して下を向かず、絶えず前を向いて力を尽くして進んでいかなければならない」と覚悟をうながした。
「逆境にひるむことなく、変化に対応して成長してまいりましょう。三条は変化に強いと今後もそう言われ続ける地域でありつつありたいと思っている。三条商工会議所は皆さまの自己変革を後押しし、地域の成長に向けて取り組んでまいる」と会員企業にエールを送り、サポートを約束した。
来賓祝辞で笠取晃一副知事が花角知事の祝辞を代読。能登半島地震に伴う県内の被害の復旧、復興のため、会員企業にも協力を求めた。
昨年は新型ウイルスが5類に移行したが、物価高騰の長期化など県内経済は依然として厳しい状況にある。「適切に価格転嫁できる機運を醸成し、県内企業の経営安定や賃上げにつなげることで、本県経済の好循環を実現していくことが重要」。県では県内中小企業の資金繰りなど、セーフティネット対策に万全を期し、企業の挑戦を後押しし、収益拡大を図って賃金の上昇に向けた環境を整えていくとともに、賃金引き上げには会員企業にも協力を求めた。
中長期的な県内の最大の課題は人口減少で、若い世代を中心に働く場、挑戦できる場、訪れる場として新潟が選ばれる地となることが必要であり、そのためには日ごろから中小企業の経営基盤強化や地域経済の活性化を図る商工会議所との連携がますます重要になると期待した。
滝沢亮三条市長は、就任以来、力を入れているふるさと納税が、昨年10月にルールが変わった影響を受けたことを話した。今年度の寄付額は昨年12月31日で約41億円まで伸ばしたが、今年度は最終的に昨年度の実績50億円の85%ほど、約43億円になるとの見通しを示し、企業の協力に感謝した。
三条市立大学の1期生の3年生が就職活動が本格化するタイミングで、ことしから三条商工会議所が産業カレンダーを廃止した英断に敬意を表した。ある会員企業が年間の休日日数を108日から114日に増やしたら応募が来るようになって、むしろ選べる立場になり、社長や役員が採用に使っていた頭と時間を金もけに使えるようになったと聞いたことを話した。
「産業カレンダーの廃止は、会員企業がもうかるため、経営力を高めるために大事なことと思う」。
3月1日に済生会新潟県央基幹病院が開院する。正月に出版された『住みたい田舎ベストランキング』(宝島社)で、三条市は北陸エリア1位になった。昨年は3位、一昨年はランク外だった。
「北陸地方1位というのは本当にうれしいし、全国でも5位の評価をいただいた。これに商工業があり、三条市立大学を含めた教育環境が整い、この3月からは県央基幹病院もでき、医療体制もさらに充実するとなれば、2025年の『住みたい田舎ベストランキング』では全国1位を皆さんと一緒に目指していきたい」と、明るい見通しで締めくくった。
国定勇人環境政務官は、能登半島地震の被害からの会員事業所の復旧、正常な稼働に政府の立場からもしっかり支えることを約束。一方で振り返れば全国的な災害、戦火に見舞われたときも燕三条地域は「ものづくりを通じて復旧、復興に必要な資材、道具、設備を提供することで、それぞれの被災地を支えてきた歴史を繰り返して今がある」と称賛した。
「誇りをもって、しっかりと製造を続けて1年たった暁には、売り上げが大きく上昇し、この結果はすべて被災地のための貢献につながったんだということを、ぜひ胸を張るような形でこの1年間、それぞれの企業活動、鋭意取り組んでいただければ」と願った。
1年半、務めている環境政務官の立場から脱炭素や資源循環に関する今まで経済のベースに乗らなかった新たなビジネスに向けた販路開拓のための支援メニューを取りそろえていることを紹介した。
「三条という地域は、いつどんな状況があったとしても未来を切り開いていく、それだけの力があると確信している。令和6年、大変な状況からのスタートとなったが、1年後にはやっぱり三条でよかったね、そう思えるような明るい年にしていこうではないか。私自身も皆さまがたの企業活動をしっかりと支えていくことを約束する」と述べた。
このほか細田健一衆院議員は遅れて出席し、菊田真紀子衆院議員は代理出席であいさつ。アトラクションで田村優子さん篠笛演奏のあと阿部銀次郎三条市議会議長の音頭で乾杯、祝宴に移った。