「プロレスの日」の19日に新潟県三条市の名誉市民で昭和史に残るプロレスラー、ジャイアント馬場(本名・馬場正平)さん(1938-99)の伝記絵本が出版されるのを前に、馬場さんのめいの緒方理咲子さんが14日、三条市に伝記絵本32冊を寄贈した。市内すべての小学校や養護学校、図書館などに1冊ずつ配置する。
■うえをむいてあるこう: ジャイアント馬場、世界をわかせた最初のショーヘイ(Amazon)
伝記絵本はジャイアント馬場没後25年企画の『うえをむいてあるこう〜ジャイアント馬場、世界をわかせた最初のショーヘイ』(303 BOOKS・税込み1,980円)。坂本九の『上を向いて歩こう』がアメリカの音楽チャートで1位になった約60年前。元プロ野球選手の馬場正平がアメリカのプロレス界を震撼させた。
大谷翔平より56年も早く渡米して米国のリングにチャレンジしたもうひとりの「ショーヘイ」の物語。その激動の人生を振り返り、戦後の日本に希望を与えたジャイアント馬場の生涯が絵本となってよみがえる。
児童文学作家、くすのきしげのりさんがストーリーを書き下ろし、『神田ごくら町職人ばなし』が注目されている若手漫画家、坂上暁仁さんが絵を担当。ジ ャイアント馬場さんの権利を管理する株式会社H.J.T.Productionの協力で秘蔵の写真が入った「ジャイアント馬場写真館」も掲載されている。
14日は緒方理咲子さん、303 BOOKS株式会社の常松心平代表取締役、株式会社H.J.T.Productionの緒方公俊代表取締役、ジャイアント馬場倶楽部の中條耕太郎会長が滝沢市長を訪問。緒方理咲子さんから滝沢市長に伝記絵本を手渡した。
常松代表取締役は「おとなのプロレスファンに向けての本だったら何となく想像がつくが、本当に難しくないかなと正直、思った」と企画のスタート振り返り、出版に至るまでの経緯を話した。
「漫画家が描いたすごく立体的で動きのある絵で届けることができ、小学生でも中学生でもきっと楽しむことができると思っている。これを機会に馬場さんに注目していただけたら」と期待した。
緒方さんは母は、馬場さんの妻だった元子さんの姉。緒方さんは14歳のときに叔母に紹介されて初めてに馬場さんに会った。緒方さんにとっては叔父だったので、馬場さんの体の大きさにはとくに驚かなかった。
思い出に残る馬場さんは、「日々の生活の言動、振る舞いがかっこいいなとか、素敵だなと感じた」。馬場さんが巨人の選手だった時代に玉川の練習場から渋谷へ行く金がなく、落ちていた硬貨を何気なくの大きな足で踏んで交番に届けずに渋谷までの電車賃にしたと話してくれたことを覚えている。
馬場さんは、海外のレストランでリクエストを聞かれると、伝記絵本のタイトルにした『上を向いて歩こう』、英題『スキヤキ』をリクエストした。馬場さんが米国でひとりで歩いてきたことに緒方さんは「あらためて本当に偉大さを感じた」。
2018年に元子さんが亡くなり、2019年2月19日に馬場さんの没後20年の興行が行われた。それからちょうど5年たった。没後20年のときは「絵本を作ろうとはゆめゆめ思っていなかった」が、孫が生まれ、ジャイアント馬場を知らない人が増えた。
「日本も上を向いて歩きにくいと感じる時代にもなってきたなか、うちの語録でもある人生チャレンジだとか、本当に自分の可能性を自分が信じてチャレンジしていくこと。そこを絵本に込めて作れないかと一昨年ぐらいから思い始めた」。
ようやく出版の日を迎えられることに「たくさんの皆さまのおかげさまで、中条さんの力も借りてことこそがめいとしての叔父、そしてことし叔母が七回忌でもあり、2人に対しての恩返しであり、やらせていただいてるわよっていうところをちょっと伝えることができましたことがすごくうれしく思っている」と感慨深く話した。
滝沢市長は、三条市の子どもたちは馬場さんが三条市名誉市民と知っているが、実際にどういう活躍をしていたかを知らず、馬場さんの偉業を知る「入り口として、入門編として本当に面白いし、いろんなところに馬場さんのいろんな時代の活躍が、まんべんなくふれられいる」と話し、子どもたちが馬場さんを知るきっかけになることを期待していた。