昨年、日展審査員に就任した新潟県燕市の洋画家、堀研一さん(77)が水彩で描いた小品を集めた堀研一作品展「フォルム(形態)への対峙」が3月20日(水・祝)まで弥彦村の弥彦の丘美術館で開かれており、油彩の大作とはまったく異なる堀さんのあまり知られていない一面を見せてくれている。
堀さんは燕市吉田地区で生まれ育ち、日展特選受賞2回、日展準会員で日展洋画部門の審査員。中央の美術団体、光風会の新潟会長も務め、県内の洋画界の中心で活躍している。
2013年に開かれた弥彦の丘美術館での堀さんの作品展では、35年ほど前から描き続いているピエロをモチーフにした油彩の大作を展示した。今回は水彩画とデッサン画で29点を展示している。
ボールペンで線を描き、水彩で彩色する。白い紙に選び抜いた繊細な線とワンポイントのような彩色が洗練されたシンプルな画面を生み出している。
新型ウイルス感染症の拡大がきかっけで、遠くには出かけず、家で静物や近所の風景に取材するようになった。展示作品のほとんどは、この2.3年のうちに描いた。「2階のアトリエじゃなくて自分の部屋でこつこつできるから」と小品を多く描くようになった。
8年前に妻を亡くした。「誰も手伝ってくれないし、何でもひとりでやらなきゃだから大変。大作は運ぶのも大変で小品でやるしかないなと思っていた」。堀さんの作品をよく知る人は、会場にピエロの作品がないことに意表を突かれる。
「水彩は楽しいね。すぐできるから。油は相当、時間かかるからね。せっかちだから」と堀さん。「油は大変。見る人も大変だろうけど」と堀さんにとって油彩と水彩はまったく別物だ。
「肩ひじ張らないでさ、のんびりゆっくり見てもらえればそれでいいんじゃないの。そんなに主義主張のない絵だから。ただ描きたい絵を描いただけ」といつものようにひょうひょうと話す。
一方で作家のキャリアとしては、「10年たって審査員なれなかったら絵をやめようかと思ってさ」、「なんのために特選を2度、取ったか。特選を2度、取らないと審査員の資格が出ないから」と審査員には特別な思い入れがあった。
2011年に初めての日展特選。13年の弥彦の丘美術館の作品展では「もう1回、特選を取ってみたい」と話していたが、その年の日展で2回目の特選に輝いた。それからちょうど10年たった昨年23年、ついに到達点としていた審査員に就任した。
ピエロはこれからも描き続けるが、「これからどうなるか自分でもわからない。試行錯誤で考え中だね」。経営してきた理容店は子どもが継いでいるが、今も時々、はさみを持ちながら創作の構想を練っている。
3月2日(土)、16日(土)はいずれも午後1時半から堀さんによる作品解説会が開かれる。会期中は無休で午前9時から午後4時半まで開館。入館料は高校生以上300円、小・中学生150円、問い合わせは弥彦の丘美術館(0256-94-4875)。