能登半島地震の被災地、石川県能登町の県立能登高校で3月30日、「夢の大凧あげ」が行われ、能登高校書道部の部員が願いを込めた書いた新潟県三条市の伝統の三条六角巻凧が能登の空に舞い上がった。あわせてFacebook Japan合同会社の寄付による福島のシダレザクラの植樹式も行われた。
全国の被災地を支援する「一般社団法人LOVE FOR NIPON(ラブフォーニッポン)」(キャンドル・ジュン代表理事)は毎年、東日本大震災が発生した3月11日に福島第一原発事故対応の前線基地だった福島県楢葉町の「Jヴィレッジ」で復興支援イベント「SONG OF THE EARTH 311」を行っている。
そのイベントのプログラムで、三条凧協会(須藤謙一会長)による「夢の大凧あげ」が恒例になっている。
能登半島地震でラブフォーニッポンはすぐに被災地に入り、能登町を拠点に支援活動を続けている。そのなかで能登高校の三条六角巻凧を福島で揚げようと、書道部の部員4人が「起死回生能登半島」、「甦る能登」と大書した三条六角巻凧2枚を製作。部員は福島のイベント会場へも出向き、凧揚げにも参加した。
今回はその三条六角巻凧を地元能登高校でも揚げようとなり、三条凧協会から結城靖博副会長ら11人が能登高校へ向かった。
手違いで書道部が製作した三条六角巻凧が届かないというトラブルがあったが、用意した4枚の30枚張り(2.20×1.75m)の三条六角巻凧にぶっつけで、その場で書いて揚げることにした。
体育館にビニールシートを広げ、ラブフォーニッポンの三条六角巻凧には、5人の書道部員が中心に「笑顔の輪」と大きく書き、その周囲にも寄せ書きのように「ずっと能登が好き」、「能登は私の全てだから私は能登で生きる」、「愛しい日々を取り戻す!」などと部員で手分けして書いた。
さらに書道部OBも7人も急きょ製作に参加。一人ひとりが35×120センチほどの紙に「みんなでおればなっとない!!」、「前を向いて元気にいかんかいね」、「精い一杯生きる」などと書き、作品を三条凧協会が用意した三条六角巻凧の上に張った。けがの功名で、忘れ物により思いがけずより多くの人がかかわることになった。
さっそくグラウンドに出て凧揚げ。凧のコントロールが難しいほど強い海風が吹き、三条六角巻凧はぐんぐん高度を上げた。書道部員も凧揚げに挑戦し、子どものように歓声を揚げ、「すごい!重い!」と凧糸を通じて風を手で感じていた。
部員で新年度で2年生になった山城杏友(やましろ あゆ)さん(16)が「笑顔の輪」を大書した。家は大規模半壊で住めない状態になり、3月1日に仮設住宅に入居した。「狭いですね。自分のプライベートな空間もなく、ちょっと不便」と話す。
「福島で揚げた凧を書いたときは、慌ただしいなかで気持ちの整理もついてなくて悲しい気持ちで書きました。今はこうやってたくさんの人が集まってくれて、ちょっとずつ復興に向けてわたしたちも皆さんと協力して頑張ってるから、前向きで明るい未来を想像して書きました」と凧揚げしているときのように顔を上げている。
その後、学校の庭で植樹式を行い、Facebook Japanが寄付したシダレザクラ6本を植えた。Facebook Japanは東日本大震災から10年になり、新型ウイルスの感染拡大で思いはあっても被災地へ行くことができない人が多いことから、「Flowers for 3.11」の特集の投稿に「いいね!」をした数だけ福島に花を寄付し、「SONG OF THE EARTH 311」の来場者にプレゼントしている。
植樹式には味澤将宏代表も訪れて高校生と一緒にシダレザクラの根に手で土をかけた。花ではなく木を寄付したことについて「能登を応援しようと、ちゃんと根付いてこれから復興していくということなので、こういった形でサクラを寄付した」と話していた。
また、三条市保内地区の造園業者らで作る凧組「保内植木組」もソメイヨシノ1本と平和の象徴のオリーブ3本を寄付した。