弥彦温泉など観光地で知られる新潟県弥彦村で14日、春の観光のシーズンインを告げる風物詩「弥彦湯かけまつり」が行われた。新型ウイルス禍をへて5年ぶりに完全復活した形で行われ、初夏を思わせる陽気に桜が散り始めと舞台が整い、花見客も巻き込んで盛り上がった。
一般社団法人弥彦観光協会(河村信之会長)が主催。弥彦公園の湯神社で受けた神湯を湯曳(ひ)き車のたるに詰めて引き、弥彦駅から温泉街を通って弥彦神社に奉納して開運厄除、無病息災、商売繁盛、交通安全、学業成就、弥彦観光の発展などを祈る。1987年(昭和62)から毎年、桜の咲くころに行われている。
感染禍で中止し、昨年は湯曳き車の出発地点を行路途中の「ヤホール」にしてコースを短縮。一般の人は湯曳き車の綱を引くことはできなかったが、ことしは出発地点を弥彦駅に戻して一般の人も参加できるようにして5年ぶりに感染禍前の形が復活した。
午後から駅前で出発式を行い、弥彦よさこい添弥が演舞、弥彦芸妓(げいぎ)が祝舞を披露した。弥彦神社氏子青年会(黒津一彦会長)が木遣(や)りを披露して出発し、弥彦ひかり講中、矢作講、桜井郷講も参加して湯曳き車の綱を引いた。
一般の人も軍手をつけて参加。「えんやー!」のかけ声に合わせて湯曳き車の綱を引いた。湯曳き車の上からひしゃくで神湯をまき、神湯にひたした青笹を沿道の見物客の頭の上で振る“湯かけ”を行って払い清めた。
途中の休憩でも、弥彦よさこい添弥と弥彦芸妓のほか、氏子青年会小若がたる太鼓の演奏、氏子青年会が一宮甚句を披露した。
湯曳き車が進む温泉街には桜並木があり、湯かけまつりを歓迎するようにぴったりなタイミングで見事に花を咲かせ、強い風が吹くと花びらを散らした。まるで映画のセットのように舞台装置は完璧だった。
一般参加は200人ほどが綱を握り、かけ声に合わせて綱を上下させたり、蛇行したりしながら湯曳き車を引いた。親子での参加も年齢にかかわらず老若男女が自然と笑顔になっていた。
途中、湯曳き車の後ろについた後綱(あとづな)を氏子青年会が進行方向と逆に引いて綱引きのような状態になることがある。湯曳き車の上から神湯をじゃんじゃんかけてけしかけ、必死の形相で綱を引いて盛り上がった。
弥彦神社の入り口、一の鳥居に到着すると弥彦山太鼓が迎え太鼓を演奏して湯曳き車の到着を歓迎。そのまま手水舎前まで進むと湯曳き車から3基のたるみこしに神湯を移し、真っすぐ参道を進むと拝殿前で神湯が空っぽになると激しくたるみこしをもんで奉納した。
最後は拝殿に向かって参拝。最初から最後まで護衛として湯曳き車を露払いした本間芳之村長は「貴重な重要な日になったいよいよ観光シーズンの幕開け。一丸となってお客様を迎えたい。平安が皆さまに訪れますように」と関係者や一般参加者に感謝した。