15日行われる新潟県三条市・八幡宮(藤崎重康宮司)の春季祭礼「三条まつり」の大名行列に初めて女性が参加する。鷹匠(たかじょう)で女の子が参加することはあるが、これまで成人女性が参加したことはなく、1822年(文政5)に始まったとされる200年余り続く三条大名行列の女人禁制の歴史に風穴を開ける。
女性が参加するのは、行列の後方に位置する八幡宮囃子方組合(遠藤勇市会長)。「行列」と「しゃぎり」の2曲を演奏する。
今回は約50人が行列に参加するが、そのうち女性が10人余りを締める。女性はこれまで10年ほど前に始まった宵宮の神事に続くはやしと、本祭当日の朝から正午まで60軒ほどの氏子の家を回りながら演奏する「朝回り」に参加してきたが、行列は女人禁制で参加できなかった。
祖父、父に続いて昨年、八幡宮囃子方組合に加わった高野晴香さん(32)は言う。昨年の三条祭り後の打ち上げで、たまたま三条祭り祭典実行委員らととなり合わせになった。
「その席で、すごい良かったよと言われて、もう女性も出してもいい時代にしようみたいになって」と、水を向けられた。さらに「行列に出られるように言ってみるねってなって。そしたら正式に出れるよって言われて、えっ!て。大きな決断だったと思う」と、高野さんも想定外の展開に驚いた。
それほど大名行列に出ることにこだわっていなかったが、「去年の私のようすを見てもらえて、それで言ってもらえた感じ。私から出たいとお願いしたのではなくて、私はもう朝回りで一緒に吹いて動ければなと思っていた」と自身が女人禁制を解くきっかけのひとつになったことを喜ぶ。
「すごくうれしい反面、ちょっと反対する人とかもいるのかなと思うけど、今はもうそういう時代じゃないし、出られるって言われたら、もう喜んで出ようかなと思って」。「とりあえず本番は楽しみぐらいしかない。父と一緒に出られるので、すごい楽しみ」と心待ちにしている。
八幡宮囃子方組合の女性が大名行列に出るのならと、奴(やっこ)とも呼ぶ先供を担当する三条先供組合にも女人禁制を解除し、女性の参加を勧める打診があった。それを受けて三条先供組合はことしの三条祭りで女性の参加者を募集したが応募はなかった。結果的にこれまで通り男性だけで行う。
2011年から行われている子ども大名行列で先供を務める子どもは8割が女の子。その女の子がおとなになって再び先供ができるよう、行き場をつくってあげたいという思いがあった。申し込みがあれば来年にも女性の先供が実現する。
今回の女人禁制の解除は、総代会で決定している。藤崎宮司は神職という立場もあって慎重な姿勢だ。「以前からそういう要望があったが、私や祭典委員長の一存で決められるものではない。いろんな機運があり、新型ウイルス禍でずっと大名行列を休止して参加者が減りつつあるなか、やっと元通りに盛大にできることになった。それに合わせて、そうした声が起こってきたので、私としてはちょうど時期なのかなと、私としても賛成したしだい」と期が熟したと考えている。
「宵宮は女性の会員たちの本番だったが、きょうは明日に備えての練習という形で張り切ってくれるんじゃないかなと思う。そんなことで期待している」と三条祭りの新たな時代の幕開けを受け止めている。