新潟県三条市下田地区のヒメサユリの群生地が、ことしは食害で花が壊滅状態になった。ヒメサユリの開花を心待ちにしていた人たちに、せめて鉢植えでもヒメサユリの花を楽しんでもらえたらと、下田地区の「道の駅 漢学の里 しただ」(渡辺梨絵駅長・庭月)では、「八十里越を越えたひめさゆり祭」と銘打ち、5日から福島県南会津町で仕入れたヒメサユリの鉢植えを展示し、希望者には販売している。
渡辺駅長が3日、ヒメサユリを栽培する南会津町の農家を訪問し、55株を仕入れた。大半はまだつぼみで、開花はこれから。これを鉢植えにして道の駅の農家レストラン「悟空」の窓際に展示し、希望があれば税込み1,500円で販売している。
ヒメサユリはオトメユリの別名で、日本特産のユリ。宮城、新潟、福島、山形の県境を接する山に分布し、野生種は環境省のレッドリストで準絶滅危惧に登録されている。
下田地区では森町地内の高城城址に群生し、「ヒメサユリの小径(こみち)」として整備されている。県外からも見物客が訪れるが、ことしは動物の食害と思われる花の欠損に見舞われ、例年のわずか1割ていどしか咲かなかった。
三条市は5月15日から31日まで17日間、開催の計画だった恒例の「越後三条・高城 ヒメサユリ祭り」を19日までの5日間で切り上げざる得なかった。
がっかりしている人が多いだろうと、道の駅が目をつけたのが、下田地区より開花がほぼ1カ月遅れの南会津町で咲くヒメサユリ。町役場に問い合わせてヒメサユリの栽培農家を紹介してもらった。
南会津町では、高清水自然公園の標高850mの山上で、7haに100万本のヒメサユリが自生する。下田地区でもかつて五輪峠に群生したヒメサユリは、高城のヒメサユリの花より赤みが強かったが、南会津町のヒメサユリも赤みが強い。開花期に合わせて毎年、「ひめさゆり祭」が開かれ、ことしは19日から30日まで開かれる。
三条市と福島県只見町を結ぶ「八十里越」が早ければ2026年9月にも開通する。開通すれば只見町の南東に隣接する南会津町もぐっと近くなる。開通を前に南会津町からヒメサユリがやって来たことから、今回の企画の名称は「八十里越を越えたひめさゆり祭」。南会津町の「ひめさゆり祭」のPRにも一役買う。
渡辺駅長は「展示したヒメサユリの写真を撮る人もいるし、足が悪くて高城は登れないから、ここで見られて良かったという人もいた」と初日からうれしい反響に喜ぶ。「ことしの高城のヒメサユリ祭りは残念だったけど、せめてその代わりに道の駅でヒメサユリの花を楽しんでほしい」と来駅を待っている。
花が終わったり売り切れたりしたら終わるが、1週間から10日は大丈夫そうだ。営業は午前11時から午後3時まで。問い合わせは「道の駅 漢学の里 しただ」(0256-47-2230)。