「子育てするなら燕市で」と子育て支援に力を入れる新潟県燕市は、県内の自治体は初めて市内すべての小中学校すべてにエアコンを設置した。昨年夏の記録的な猛暑を受けて子どもたちを熱中症から守るには待ったなしと、ことしの夏までの導入を最優先し、なんとか間に合わせることができた。全小中学校で週明け10日から稼働する。
昨年の夏は全国的に記録的な猛暑に見舞われた。北海道伊達市の小学校では、体育授業後に熱中症と思われる症状で女児が死亡。山形県米沢市の中学校でも部活動後に女子生徒が死亡し、学校体育館での運動による熱中症の危険性が問題視された。
昨年9月の燕市議会定例会の一般質問では、申し合わせたように4人の市議から、小中学校体育館の熱中症対策の重要性に関する質問があった。これを受けて燕市は、ことしの夏までにはエアコンの設置を間に合わせようと急いだ。
一般的なエアコンの設置には費用も時間もかかるため、すぐに設置できる移動式エアコンを採用。導入費用は一般のエアコンの数分の1に収まる。
小中学校の普通教室などへのエアコン設置は、ふるさと納税の自治体クラウドファンディング事業を活用したが、それでは夏に間に合わない。補助金を申請する時間もなく、起債で財源を確保した。
エアコンの稼働には、三相200ボルトの電源を引く必要があり、順に各学校で電気工事を進めている。10日の稼働開始に電気工事が間に合わない学校は、地元燕市の企業、北越工業(株)から三相200ボルトを出力できる発電機を借り、それでも足りない分はリースで調達。8月末までにすべての学校の電気工事が終わる見込みだ。
市内19小中学校すべての体育館に、広さの違いで小学校は3馬力、中学校は4馬力のエアコンを4台ずつの計80台、配備した。吉田中は体育館が2つあるため8台を設置。エアコン導入の事業費は1億9800万円で、ほかに電気工事が1200万円。
移動式エアコンは本体の背面にいわゆる室外機が設置されている、いわゆるスポットエアコンというタイプ。本体から出る冷風を打ち消すだけの熱量を室内に排熱するので、室内全体の温度は下がらない。しかし体育館のように天井が高いと温風が上にたまり、下に冷風がたまって床に立つ人は涼しくなるというわけだ。
7日、吉田中学校で体育の授業中にエアコン稼働のデモンストレーションを行った。それほど外の気温が上がらなかったため、体育館全体の室温を下げる効果ははっきりとわからなかったが、きんきんと冷えた風が吹き出した。少なくとも冷風が届く範囲にいれば熱中症の心配がないことは十分に想像できた。
エアコンにはサッカーのゴールのようにフレームにネットを張ったもので保護されている。運動の邪魔になるのではと心配されたが、思ったほど体育の従業の支障にはならず、生徒も気にせずに運動していた。
県内で体育館にエアコンを設置している小中学校はほとんどない。体育館にエアコンをまったく導入していない三条市からは教育委員会は建設課や防災担当の職員が見学に訪れ、エアコンの効果や活用方法を確認していた。
糸魚川市教育委員会も見学に訪れた。糸魚川市でも小中学校体育館へのエアコン導入を検討している。糸魚川市教委の職員は「事業費や国からの補助金はないかと調べているが、今の所いい財源がなくて」。見学して「非常に音も静かで風もものすごく飛んでいたので、使用にあたって不快感はなく、ぜひ導入したいという気持ち」と導入に前向きになっていた。
小林靖直燕市教育長は「暑い夏の前に準備ができてよかった。子どもたちの命と健康を守って、暑いなかで子ども達が健やかな成長ができるよう、必要な運動や遊びが確保されるように取り組んで行きたい」と話していた。