新潟県三条市は、三条市名誉市民の漢学者、諸橋轍次博士(1883-1982)の生誕140周年を記念して昨年、創設した「三条市諸橋轍次博士奨学金」をことしも三条市立大学(アハメド・シャハリアル学長)の学生12人に給付する。
三条市は各種の奨学金を昨年度から「三条市諸橋轍次博士奨学金」の名称で統一した。三条市立大生への奨学金は、返還の必要のない年額48万円の給付金を支給するもので、成績優秀な1年生と2年生6人ずつの12人を奨学生としてシャハリアル学長が決定した。
昨年は滝沢亮市長から奨学生に認定証を授与したが、ことしは3日、三条市立大で激励式を行った。奨学生は滝沢市長とともに車座になってひとりずつ順番に奨学金を申請した理由や奨学金の使い道などについて話し、滝沢市長にメッセージを手渡した。
奨学生が奨学金を申請した理由は、「アルバイトとかの時間を減らして学生の本分である学業に励みたい」や「学業に励むために金銭的な余裕が必要だと感じた」。
また、「3きようだいで両親は共働きなので、少しでも親の負担を減らしたいと思った」、「現在の状況では学費や生活費のためにアルバイトを行い、学業との両立が難しくなっていた」と言う切実な声もあった。
使い道は、「奨学金をすべて学費に充て、それで生まれた時間的、金銭的な余裕を学内外の活動に充て、学内では三燕祭や学生会、学外では三条マルシェの参加などに力を入れる」や、アウトドア関連の職に就きたいので「アウトドア製品を購入してアウトドアのアイデアを日々、日常の中から探していきたい」、「起業するためにインターンシップやTOEIC、日商簿記などの試験に挑戦し、たくさんのことにふれ、いろいろな経験を得たい」と自分への投資と考える人も多かった。
滝沢市長は自身も大学とロースクールで給付型の奨学金を受けた経験から三条市として奨学金制度を拡充していると話し、「市役所からの奨学金ではなく、三条市民全員から皆さんに対する応援、勉強を頑張て充実した大学生活を送ってねというメッセージで、私は市民を代表して話している。重荷と感じる必要はないが、期待をしっかりと受け止めて勉強してもらいたい」と話した。
シャハリアル学長は、日本への留学に「お金はなく、夢と希望しかもってこなかった」と、奨学生の言葉に自身の学生時代を思い出し、「責任の重さは人を成長させるので、責任の重さは十分に考えてほしい」と求めた。
さらに「三条市がこういう形で皆さんを支援しているということは、どういうことかというのは多分、それぞれ答えはないが、皆さん一人ひとりが答えになると思う。それを考えながら勉学するとよりいっそう立派な自分をつくり、あるいはその人づくりにつながる」と、奨学金が奨学生の成長につながることを願っていた。
ただ滝沢市長は冒頭、奨学生に諸橋博士のことを知っているか聞くと、ほとんど諸橋博士のことを知らず、学生が諸橋博士について学ぶことの必要性を感じていた。