新潟県加茂市の加茂駅前の商業施設「メリア」3階の「KAMO MACHINAKA BASE(加茂まちなかベース)」に9日、無人古本屋がオープンした。名前はまだない。300円以下の捨て値同然の安さで販売し、売り上げはそっくり寄付に充てる。
長さ16メートルに渡って連なる3段の本棚には、ざっと2,000冊の古本が並ぶ。バックヤードにはまだ1,000冊が眠り、計3,000冊にのぼる。すべて寄付なので、児童書を含めさまざまなジャンルの書籍がそろっている。
定価1万円を超える美術書もあるが、値札は100円、200円、300円の3種類。傷んだ本の無料コーナーまである。一般の古本屋ではありえない破格の安さなのは、料金を入れる箱に「募金箱」とあることからもわかるように、もうけは考えていない。売り上げはそっくり加茂市の社会福祉費寄付金に寄付する。
無人古本屋を運営するのは、2018年ごろに加茂市の有志数人で発足した「かも倶楽部(くらぶ)」。ご当地ソングを制作したり、コンサートを開いたりと不定期で楽しみながらまちづくりや社会貢献につながる取り組みを行っている。
無人古本屋は初代会長の飛田正玄さん(64)=法音寺住職=が発案した。おもしろそうだからやってみようと、どこで販売するかなど具体的な当てもなく軽い気持ちで始めた。
2020年に発行された加茂商工会議所発行のフリーペーパーに今の会長、スタジオ「LJ STUDIO」を経営し元加茂市職員の齋藤淳(すなお)さん(63)のインタビュー記事が掲載された。そのなかで無人古本屋の企てと古本募集について話してから、古本が集まり始めた。
寄せられた古本は、加茂市・加茂川に鯉のぼりを泳がせる会を応援するための加茂川鯉のぼりオリジナルグッズ販売店「koite(こいて)」の2階に保管してきた。
当初は駅前の空き店舗を借りる案もあったが、齋藤さんは「ここがいちばん良かった。管理人がいるし、夕方には高校生が集まるし、願ってもないスペース」と想像以上の環境で開店できたことを喜ぶ。初日は午後からのオープンでさっそく数人の利用があった。
「物を大切にして人から人の手へ渡っていけばいいと始めて、まさかこんなに本が集まるとは」と驚く。とはいえ「本は重いし、寄付してもらった本をふいたり、値札をつけたりするのは思った以上に大変だった」と、まさにうれしい悲鳴だ。
古本がどんどん売れて本棚に空きができれば、本棚のスペースを個人にレンタル貸しして個人で古本を販売できる仕組みも考えている。
無人なので利用については善意に任せるしかないが、「市民の好意を無駄にしないようにしてほしい」と協力を求めている。利用と同時に引き続き古本の寄付も募っている。問い合わせは齋藤さん(090-5327-7320)へ。