新潟県三条市の歴史民俗産業資料館別館「ほまれあ」の開館にあわせて20日、三条市出身のプロレスラー、ジャイアント馬場(本名:馬場正平)さん(1938-99)の没25年記念事業がふるさと三条市で行われた。そのなかで馬場さんの愛車のキャデラックによるパレードが行われたあと、「ほまれあ」にキャデラックが搬入、展示された。
ジャイアント馬場さんは、三条市出身の昭和史に残るプロレスラー。2016年に三条市名誉市民になっている。20日開館の「ほまれあ」の名誉市民ギャラリーにジャイアント馬場さんコーナーもあることから三条市は没25年記念事業を企画した。
その目玉が、ジャイアント馬場さんの愛車のキャデラックで、ジャイアント馬場さんがハワイで最後に乗っていた純白のオープンカー「キャデラック エルドラド コンバーチブル」。2020年12月に馬場さんの著作権を管理する株式会社H.J.T.Productionから三条市に寄付され、株式会社諏訪田製作所が展示、管理してきた。
それから3年8カ月、「ほまれあ」に移して展示することになった。当初は諏訪田製作所から「ほまれあ」までパレードするプランもあったが、キャデラックは国内の型式認定を受けていないため公道を走れないため、図書館等複合施設「まちやま」の敷地内を走行するパレードにした。
会場にはプロレスファンなど100人余りが訪れたが、あいにくの雨。オープンカーなのでパレードをあきらめてセレモニーをスタートしたが、その途端に雨が弱まり、予定通りパレードを実施した。
皮切りは滝沢亮三条市長とH.J.T.Productionの取締役でジャイアント馬場さんのめいの緒方理咲子さん(66)と緒方公俊代表取締役が乗車。「赤コーナー、5,249ポント、キャデラックエルドラド!」のリングコールに続き、ゴングを合図に発車した。
ジャイアント馬場さんの入場曲「王者の魂」が流れるなか、白煙を上げてゆっくりと進み、サイエンスホールの外周を1周した。集まった100人を超えるファンからは「馬場さん!」の声も上がった。
学生プロレス経験者の滝沢市長は、車上から手を振って満面の笑みでご機嫌。「まだまだこのキャデラック、おれは現役だぞと言っていた。今からタイトルマッチを戦えるのでは。それぐらいの元気さでもっと乗りたかった」と声を上ずらせた。
続いて上田泰成副市長、馬場博文市議、ジャイアント馬場さんの盟友だった今は新潟プロレスの顧問でもあるプロレスラーのグレート小鹿さんと新潟プロレスを運営する株式会社ホライズンの乙川敏彦代表取締役会長、ジャイアント馬場伝記絵本『うえをむいてあるこう』を出版した303BOOKSの常松心平代表取締役、諏訪田製作所の小林知行社長、三条ジャイアント馬場倶楽部の中條耕太郎会長ら関係者が順に乗車した。
キャデラックを大切に保管してくれた小林社長に滝沢市長から感謝状を贈呈。集まったファンに感謝して関係者らがもちまきを行い、もちまきにキャデラックに乗って記念写真を撮ることができる当たりくじを5本、入れた。
記念撮影をゲットした子ども連れのプロレスファンの三条市の男性は、「非常に馬場な、いい経験ができた」、「こういった機会があればまた足を運びたい」と興奮冷めやらないようすだった。
グレート小鹿さんは、国内でジャイアント馬場さんの運転手をしていた時代がある。今回のキャデラックより小さなキャデラックで、「馬場さんは助手席に乗って葉巻をくわえている方だからね。黙って物言わないで。僕の方がけしかけると、ふーん、そうかって、そんなしか話さないよね」と当時を思い出していた。
緒方理咲子さんは15歳の誕生日祝いにジャイアント馬場さん夫婦からハワイ旅行をプレゼントしてもらった。そのときにジャイアント馬場さんのキャデラックに乗っている。
「何十年ぶりで感無量。走馬灯のようにいろんなことが思い出されてきて、おじがまたハワイに行ったら乗ると思っていたのに、いきなり自分の人生が終わってしまった。その年の秋におばはキャデラックを取り寄せると言って、日本に持って来たこととか、すごい長いことが思い返された」と振り返った。
「本当にたくさんの方の世話になったたまもの、証し。こうやっておじの生まれ故郷に戻らせていただけたこと、立派な『ほまれあ』に入り、これから長い間、皆さまの目にふれていただけること。何か、めいとして生まれてきたひとつのことをやり遂げたような、恩返しがひとつできたような気がする」。
「勝手なリクエスト」と前置きして、年に一度、アニバーサリー的にキャデラックを外に出して乗車できるようなイベントを三条市で企画してもらえることを願っていた。
小林社長は3年8カ月の間、毎日、キャデラックをふいてカバーをかけ、定期的にバッテリーを充電したり、エンジンをかけたりして大切に保管してきた。
「オーディエンスのオーラがうわーと来て、横綱の優勝パレードのような感じ。馬場さんのふだんが、僕らにとってトップ・オブ・ザワールドのような気分になる。えらい気持ち良かった」と小林社長。
このキャデラックを見るために諏訪田製作所を訪れた人も多かったし、ショップや工場見学に来社した約20万人がこのキャデラックを見たことになる。
小林さんは「三条の誇りをみんなに感じてもらえたのでは」と言い、車好きなこともあってアメ車にも興味を示していた。
中條会長は「感無量としか言いようがないぐらいうれしい。馬場さんに感謝のみ。乗った感じはスケールを感じる。ふつうの車じゃないのが良くわかる。馬場さんだからこそ似合う車と感じた」。
今度は「ほまれあ」に展示されて誰でも見ることができ、「三条に生まれ育った、世界に活躍したジャイアント馬場の足跡を後世に伝えるような意味で味わって見ていただければ」と願った。
このあと「ほまれあ」へ運んで館内に搬入した。旧図書館の夜間返却口のあった部分を今回の改修でキャデラックを搬入するための入り口を新設した。前日にも搬入のリハーサルを行ったので、この日もスムーズに搬入が完了。ジャイアント馬場さんの展示ブースに設置された。
没25年記念事業では、ほかにこの日だけの馬場さんゆかりの品を展示した記念展と、馬場さんにゆかりの往年の名プロレスラー川田利明さんと田上明さんによるトークショーも行われた。