自民党新潟県連が候補者を公募した来年夏の参院選新潟選挙区(定数1)で、14人の応募者からしぼり込まれた4人に選ばれた新潟県加茂市のCSO(最高戦略責任者)、市川恭嗣(たかし)氏(36)は、7日付けで退任するのに伴って記者会見した。任期途中の退任をわびる一方、「引き続き新潟に貢献していくこと、加えて自身が取り組んできたことを、より広い範囲で国、県と一体となって進めていくことができるのではないか」と応募した思いを話した。
市川氏は愛知県出身で、京都大学経済学部卒。東京電力、国会議員秘書を経て2015年に豊田通商に入社し、トヨタシステムズ戦略企画本部出向を経てタイ・バンコクに駐在したあと、加茂市のCSO公募に応募し、260人の応募の中から採用された。任期は2022年4年10月1日から25年9月30日までの3年間。任期を折り返したばかりでの退任となった。
7日、市役所で行われた藤田明美市長の定例記者会見に続いて市川氏が会見した。市川氏はCSOとしての1年10カ月を振り返って財政の健全化、行政組織運営の効率化、産学官金連携の推進に取り組んだことを話した。
「まだまだ道半ばではあるが、一定の筋道をつけることができた」、「市長部局、教育委員会と各課が連携しながら自走する段階に入っている」との現状認識を示し、「藤田市長の強いリーダーシップのもと、これまで以上に職員それぞれが市民に寄り添える笑顔あふれるまち加茂の実現に向けて取り組みを進めていく」と述べた。
応募の経緯にについては、CSOを務めて2年を過ぎようとしているなか「任期の終わりを意識したときに、自身の身の振り方というところも考えるようになった」。新潟に引き続き何か貢献することができるのではないか、新潟県全体や日本の各地の地方圏域でも同じような課題を抱えているのではないか、そのなかで自身が取り組んできたこと少しでも役に立てるのではないかということに加えて、「自身が取り組んできたことをより広い範囲で、国、県と一体となって進めていくことができるのではないか」との思いで応募を決意した。
訴えていきたいことは、これまで加茂市で取り組んできたことを基本線に、産学官金連携による地方創生、公共施設、インフラ、公共交通といった社会資本の再編、そのための取り組みの財源をどう生み出すかということをあげた。
なかでもどうやって財源を見いだすかが重要で、「中長期の財政負担をしっかりと国、県、自治体がそれぞれシミュレーションで把握しながら投資できる範囲で積極的に、とくにハード面の更新にまず注力しながらソフト面も選択と集中。そういった取り組みを訴えたい」。
具体的な成果については、未来ビジョンの策定を加茂駅周辺まちなかエリアプラットフォームを通じて進めており、ことし9月末までに未来ビジョンを公表する見通しになっており、未来ビジョンに伴って実施されていく実証的な取り組を引き続き見てほしいと求めた。
財政の健全化の計画を進め、87万円まで落ち込んだ財政調整基金を今年度は12.8億円まで回復させ、目先の資金繰りに窮することはなくなった。公共施設やインフラの将来負担に加茂市はしっかりと向き合う方向で進んでいるが、「将来負担を見据えた負担に対しての取り組みをどう進めていけるのかが一番大きな課題感として感じた」。
民間の視点では、自治体にもさまざまなノウハウが常に更新されているが、PDCAサイクルを回していく、長期、中期、そして短期の計画に基づいた取り組みといった民間では当たり前のノウハウがまだまだ不足していると着任して感じた。
外部の人材の活用は非常に意義があり、加茂市は地域活性化企業人という制度を活用して今は民間から8人が出向という形で活躍している。これまでの行政が専門性をもたなかった部分に民間の人が入り、そのノウハウが行政職員に移っていき、民間の力を借りるのが重要とした。
また、藤田市長は市川氏の決断について、任期途中の退任だけに「最後までやってほしいという声もある一方で、市川がやりたいという、新しいことにチャレンジしてみたいというところも気持ちも十分、理解できるところはあったので、私は本人が進みたい道に進むべきと思う」と理解を示した。
市川氏は「なぜ今なのかというような言葉も当然、ちょうだいしている。いつか、今すぐにとは言わないが、あのときの市川の決断は良かったんだ、それが加茂であったり、新潟のためにつながっていくんだと、いつか言っていただけるように、実現するように、とにかく全力を尽くしていきたい」と語気を強めた。