失火による火災でことし5月から休業していた燕背脂(つばめせあぶら)ラーメンの元祖「杭州飯店」(新潟県燕市燕)が改修工事を終えて13日、営業を再開を迎えた。開店前に約100人の杭州飯店ファンやラーメンファン行列をつくり、待ちに待った3カ月ぶりの復活を喜び、これまで変わらない味を自分の舌で確かめた。
杭州飯店は新潟五大ラーメンのひとつ、背脂ラーメンを生み出した名店。昭和8年(1933)に開業した前身の「福来亭」から数えて90年を越える歴史があるが、ことし5月19日、火災が発生した。
鉄骨造3階建ての建物の1階、厨房(ちゅうぼう)から出火した。建物は十分に使える状態だったため、厨房設備も含めて1階の内装などをそっくり新しくした。
当初は1カ月もあれば営業を再開できると踏んでいたが、現実は甘くなかった。せめて花火見物の来客が多い8月2、3日の長岡花火には間に合わせたいと思ったがそれもかなわなかった。最後のタイムリミットと考えた帰省客でにぎわう盆の墓参りの13日には、なんとか間に合わせることができた。
13日は午前11時の営業開始までに約100人が行列をつくった。行列は近くの駐車場にまで延びたが、週末は県外客を中心に駐車場まで行列ができるのが杭州飯店の通常運転だ。炎天下で行列する人たちが熱中症にならないように、杭州飯店と懇意にしている弥彦村の書家、田中藍堂(らんどう)さんが「うまい背脂」、「お待たせしました」などと書いたうちわをプレゼントした。
一番乗りは富山県入善町から訪れたひとりで訪れた男性で自称「亀ちゃん」(46)。午前3時半気象、4時出発で高速を使わず3時間半あまり。7時20分に杭州飯店に一番乗りした。
新潟のご当地アイドルグループ、Negicco(ネギッコ)のファンで、その応援でちょいちょい新潟を訪れている。ラーメン大好きで、「新潟県のラーメン本当に違います。やっぱり新潟県レベル高いなって思います」。
ほかの店では背脂ラーメンを食べたことがあるが、杭州飯店は初めて。一番乗りにこだわったわけではないが、「かねてからうわさで杭州飯店さんの中華そばはうまい聞いてましたんで、ラーメンに目がないもんで、一度食べてみなければという思いで」と亀ちゃんは実食を楽しみにしていた。
二番乗りは近所の男性と、京都に嫁いだ同郷の女性とその夫のグループ。京都の夫婦は大型連休と盆の年2回、新潟へ帰省したときに必ず杭州飯店に立ち寄っている。
ことしの大型連休も杭州飯店を訪れたが、その後に火災。とはいえぼやていどと聞き、すぐに営業を採火するだろうと思っていた。今回は11日に帰省し、13日は京都へ帰る前に訪れた。
「毎回、実家へ帰って来るときにはここに寄るようになって、そのうちここに寄るために帰って来るようになって。目的が変わってきた」と笑い、「盆に間に合うかなって言ってたんやけど、お盆に来たときには間に合わなかったんで、きょう帰るんでぎりぎり間に合ってよかった」といわば“本命”の目的をかなえられて喜んでいた。
徐社長は「できる限り早くと業者さんにお願いしました。帰省されてるお客さんにも間に合わせたいなというのもあって」と盆に間に合ったことを喜ぶ。営業再開に「言葉にできない。ありがとうございます。それだけ」、「今までと変わらないラーメンをこれからも作り続けていこうと思います」と話していた。