新潟県燕市出身で弥彦村に住む書家、田中藍堂(らんどう・本名:健二)さん(70)の地元、弥彦の丘美術館では8年ぶり2回目となる企画展「田中藍堂書展−膽識(たんしき)の語と共に−」が9月29日まで開かれている。
田中さんは1954年に燕市に生まれ、77年から父の奎堂さんに書の指導を受け、翌78年から泉原寿石氏に師事。94年に県展賞を受け、翌95年に弥彦へ移住し、弥彦を拠点に活動を続けている。県展無鑑査、九藍社を主宰し、書家の枠を超えて地域の活動にも積極的にかかわっている。
初日24日は開場式が行われた。約40人が出席し、本間芳之村長と新潟県書道協会の丘山三槐(さんかい)副会長のあいさつに続き、田中さんがあいさつし、展示内容を紹介した。
前回、弥彦の丘美術館では12点を展示したが、今回はそれ以降に書いた14点を展示。大きな違いは、前回はなかった両極端な少字数と多字数の作品を含めて展観と説明した。
書作するときの心構えとして大切にしている言葉を書いた。自分の立ち位置がしっかりしているか。自由に心から解放されているか。絶滅危惧種のごとく、類似がなく自分の個性を追い求めているのか。そして最後に、決めたら何が何でも成し遂げる。
「膽識」は、物事を成就するときに必要なのは、知識、常識、見識ではなく、何事も必ずや成し遂げるという強い覚悟。「その覚悟を短縮して私も習ったつもりだ」。
一方で「NO WAR.」、「ゲルニカB」といった反戦平和を訴える作品もある。「戦争反対につながるとか、紛争を抑えるとか、拉致についてはもうあと3、4年すると起きてから50年たつ。私が日常的に本を読んだり、新聞を見たり、テレビを見たりするなかで、心に深くとどまって、これは私だけじゃなくて他の人にも伝えなきゃいかんと思うことを、作品にまとめた」。
そのきっかけは2004年に弥彦神社前の酒屋の2階で初めて個展を開いたとき。当時の新潟県書道協会・田中邦正会長と話した。「最後に書家は自分の作品で、世直しをすべしという言葉を強く言い残し、帰られた。私にはほど遠いミッションだったが、いつか手をつけたい、やっていこうという思いが年々、強くなった」。
あと何年強い気持ちで、筆を操れるか、達成できるかわからないが、田中先生から受けたミッションを大事にし、一歩でも二歩でも、世の中が良くなるよう、貢献できるよう努めていきたい」と来場者にも協力を求めた。
入館料は高校生以上300円、小中学生150円。会期中は無休で午前9時から午後4時半まで開館。作品解説会を10日間、その場で書作を見てもらう席上揮毫(きごう)も8日間、行っている。いずれも午後1時半からで日程は次の通り。
■作品解説会=8月26日(月)・30日(金)・9月2日(月)・6日(金)・9日(月)・13 日(金)・16日(月)・20日(金)・23日(月)・27日(金) 13時30分より
■席上揮毫=8月24日(土)・25日(日)・9月1日(日)・8日(日)・15日(日)・22 日(日)・28日(土)・29日(日) 13時30分より