新潟県三条市の前市長、国定勇人衆院議員(環境政務官)は、19日に週刊文春電子版で国定氏が三条市長時代に栄工業流通団地について後援企業に優遇措置を講じたなどとする記事に対する週刊文春に送付した回答を翌20日、Facebookなどに投稿した。
週刊文春は記事で、国定氏に記事を送ったが、期日前に回答はなかったと書いている。そのことついて国定氏は、回答期限が事実上1営業日しか与えられず、三条市との調整などに要する時間もあり、事実上回答不能な期限設定だったとし、週刊文春の質問に答える形で見解を示した。回答の全文は次の通り。
問1 国定氏が市長時代にスタートした栄地区工業流通団地における分譲計画に関してご質問します。同計画は18年12月3日に分譲地の公募が開始されましたが、その後、20年8月に5年間の土地無償貸与を含む「土地使用貸借契約」という制度が導入されています。この制度が導入された経緯と理由についてご教示ください。これは、国定氏が主導して行われたものでしょうか。
(答)
工業流通団地は、三条市内では過去にない非常に大規模な団地であり、期待された大きな経済効果を早期に実現するため、様々な優遇策を設けて18年に公募を開始しました。
その後、20年に新型コロナウィルス感染症禍という大きな逆風が生じたため、担当部局に対して更なる支援策の検討を指示しました。いち早く手を上げられた内定企業から、土地代金の支払い猶予など、具体的な御要望をいただいたことなどを踏まえた担当部局の提案を基に協議を重ねた結果、市及び県央土地開発公社としてその後の完売に向けた取組としても有効と判断し、20年8月に、優遇策の一環として土地代金の支払い猶予や使用貸借による税制優遇の導入を機関決定しました。
【参考】
使用貸借契約の主体は市ではなく県央土地開発公社であり、その契約については議会による議決事件ではありませんが、県央土地開発公社が工業流通団地造成事業資金として金融機関から借入れする資金について、その借入先に対して市が債務保証する債務負担行為の議決をいただいています。
問2 その結果、21年7月から22年9月にわたり、株式会社高儀ホールディングス、A社(週刊文春からの質問状では実名。以下同じ。)など9社が県央土地開発公社と「土地使用貸借契約書」を締結しています。同契約書は締結日から5年間にわたり無償で土地を貸与する旨が記載されており、さらに本来支払うべき固定資産税が免除されています。また、分譲地の所有権は、売買代金の3分の1以上の額を納入し、必要書類を提出すれば移転することができる旨も定められています。こうした優遇措置の結果、三条市には約32億5千万円の譲渡益や5年間で得るべき計1億5千万〜2億円に近い固定資産税と都市計画税が入っていません。こうした問題について、国定氏がどのようにお考えでしょうか。
(答)
固定資産税と都市計画税の取扱いは、より長期的な視点からの進出企業による雇用の拡大や法人市民税等の税収増という経済効果を生み出すため、優遇策のひとつとして設けたものであり、法的にも問題はありません。
また、ご指摘の「三条市には約32億5千万円の譲渡益(中略)が入っていません。」の趣旨が必ずしも明らかではありませんが、売却収入については、主に土地の造成等に要した経費を賄う県央土地開発公社の収入になるものであり、三条市の利益になるものではありません。ちなみに、それらは、進出企業のそれぞれの契約内容に応じて今後県央土地開発公社に支払われるものと承知しています。
また、固定資産税等の減免や固定資産税等相当額の補助金の交付などによる優遇措置は、一般的なものと承知しています。
問3 上記の「土地使用貸借契約書」には「本件土地をこの契約の締結の日から3年以内に指定用途に供するものとする」と定められますが、現在一帯はほとんど更地になっています。企業誘致という本来の目的は成し遂げられたのか。見解をお聞かせください。
(答)
既に、進出企業による工場の操業や建設工事への着手などが進められており、今後もそれぞれの経営戦略、事業計画に基づき、契約時には見込むことが難しかった状況の変化を踏まえつつ、操業等が順次進められていくものと承知しています。
【参考】分譲契約率(令和6年8月末現在)
・契約率(面積ベース)・・・96.7%
・企業数・・・20社
問4 この工業流通団地の分譲を巡り、国定氏がA社の社長(週刊文春からの質問状では実名。以下同じ。)に対し、「何も建てなくて良いから、とりあえず土地を借りてほしい」旨の発言を行ったことは事実でしょうか。A社社長に限らず、国定氏が企業に対し、土地の使用貸借や購入を持ち掛けたり、相談したりしたことはあったか、事実関係についてお答えください。
(答)
「A社社長」はフルネームでの適示からして「社長」ではなく、「会長」を指しているのではないかと推測されますが、いずれにしてもそのような事実はありません。
また、いかなる企業に対しても、ご指摘の工業流通団地を巡り、土地の購入を始めとする様々な働きかけや相談等を私自身が行ったことは一切ありません。
問5 20年6月11日、「国定勇人後援会」は高儀ホールディングス取締役の高橋一夫氏から150万円、21年4月15日には150万円、同年4月13日には高儀から国定氏が代表を務める「自由民主党新潟県第四選挙区支部」に150万円の献金を受けています。また、同支部は21年3月31日にA社から150万円の献金を受けています。市長時代に高橋氏、高儀ホールディングスあるいは高儀、A社、A社社長から献金を受けたことはあるか、ご教示ください。
(答)
前回の衆議院総選挙に向け、当時の自由民主党新潟県第四選挙区支部長就任の内示(第四選挙区支部長幹事長会議における選定)を19年7月27日に受けたことに伴い、20年2月4日には後援会事務所を開設し、事務所維持等に要する費用が発生することとなったことから、ご指摘のとおり、同年6月11日高橋一夫氏個人から150万円のご寄付をいただいておりますが、本寄付以外に、ご指摘の個人、法人から市長在任中に寄付をいただいたことはありません。
問6 A社は献金の直後である21年7月15日に、高儀ホールディングスは同じく献金の直後である21年12月22日に県央土地開発公社と「土地使用貸借契約」を結んでいます。献金を行った企業2社がこの工業流通団地の分譲を巡り、多大な優遇措置を受けていることについて、不当な利益供与ではないか、という指摘があります。国定氏の見解をお聞かせください。
(答)
ご指摘の2社については、19年1月及び2月に応募いただき、同年9月に同社を含む分譲企業の内定等を記者会見で発表しています。そのため、献金によって同社に有利な契約が締結されたという指摘は当たりません。
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その他、記事にあるとおり「高橋氏から国定氏の妻に贈与された一軒家の自宅」に関する質問も頂いており、当該質問に対する見解も持ち合わせているところですが、有料版の記事ということで割愛させていただきます(なお、有料版の記事では週刊文春の直撃取材を受けた家内が受け応えをした模様をかなり丁寧に取り上げて下さっています)