新潟県田上町の市民団体「護摩堂山頂トイレを水洗洋式化する会」(吉田達雄代表)は、護摩堂山の山頂に田上町が設置するくみ取り式トイレの水洗洋式化を求める1,630筆の署名を集め、要望書とともに2日、田上町の佐野恒雄町長に提出した。佐野町長は「財政的に厳しい」としながらも、「どういうことで改善ができるかということは検討させてほしい」となんらかの改善を図りたい考えを示した。
護摩堂山は約40分で登頂できる気軽に登山を楽しめる山。年間8〜10万人が訪れ、毎日、登る人もいる。町民や近郷住民に親しまれ、6月のあじさい祭りは登山者の行列ができるほどにぎわう。
登り口駐車場と中腹には水洗トイレが設置されているが、山頂トイレは約40年前に設置されたくみ取り式の和式トイレ。男女それぞれ3つの便器がある。
定期清掃されているが、照明がないので日中も薄暗く、クモの糸が張ったり、汚れが便器にこびりつくなど劣悪な状況にある。いわゆる「ぼっとん便所」で、怖くて使えず、やむをえず屋外で用を足す子どももいる。
昨年の12月議会で、轡田禎町議は山頂トイレの改善を求める質問をした。その質問があると聞き、「護摩堂山頂トイレを水洗洋式化する会」代表の吉田達雄さん(68)=田上町=は、傍聴に出向いた。「佐野町長が必要は感じないとはっきりおっしゃった。それはだめだろう」と、吉田さんは立ち上がった。
昨年12月9日、のちに会のメンバーとなる人らと一緒に、登り口で登山者にアンケートを取った。4つの質問のひとつが山頂トイレについて。78人の回答者には山頂トイレを使ったことがない人もいただろうが、「水洗化改善」が8人、「現状から改善」が24人あり、4割の人が山頂トイレになんらかの改善を求めていることがわかり、改善の必要性を確信した。
ことし2月に町民3人と町議3人の6人で会を発足。3月から9月まであじさい祭りの来場者や会員の知人らに改善を要望する署名を集めた。署名は町民から705筆、町民街から925筆の計1,630筆にのぼった。一方、吉田さんは9月議会で水洗洋式化を求める請願を提出し、賛成9、反対4で採択された。
集まった署名を手に2日、会のメンバーの吉田さんと長谷川陽一さん(63)、森山清吾さん(63)の町民3人と、轡田、森山晴理、渡邉菜穂美の町議3人の6人が田上町役場を訪れ、佐野町長に要望書と署名を手渡した。
山頂には電気と水道が引かれいてない。佐野町長は「できることなら何とかしたいのは、私の気持ちとしてはやまやまだが、水道がいってない、電気がいってないというなかで、そこに水洗のトイレを作るのは大変な金がかかる。この一点」、「今の町の財政状況からして、難しいのが現実」と説明した。
「決して改善できないと言ってるわけじゃない」、「やるからには、きちんとやりたいのが私自身の考え。実際に水道を通して、電気を通してという話になってくると、ちょっと財政的に厳しい」と自身も改善したいと思っているが、厳しい財政が足かせになっていると理解を求めた。
吉田さんは、財政的にいきなり水洗化が難しいのは承知のうえで、「立派ないれものは利用するべきというのが我々の考え方」。「とにかく使えるトイレにしてくれと。そこをくみ取っていただき、我々も議員を含めて勉強していくので、また提案なりさせていただきたい」と話した。
また、「護摩堂山は田上町民、心の山。宝にしていただきたい。誰でも知ってるような山だし、田上をPRする最大の武器だと思う」、「なんか町を活性化するのに護摩堂山を使えないかと。そんな勉強会じゃないけど、我々はこれかもらやっていきたいと思う」と引き続き改善の手法を考えて提案、要望していく考えを示した。