新潟県燕市の吉田中学校を卒業、東京で役者として活躍する本多菊雄さん(59)は、の凱旋(がいせん)公演とも言える独り芝居「三島由紀夫 招魂の賦(しょうこんのふ)」が11日(金)、12日(土)の2日間、燕市吉田産業会館で開かれている。初日11日は中学時代の同級生を中心に約100人が来場し、死をもって日本人の目覚めを訴えた文学者、三島由紀夫(1925-70)が今まさに実在するかのような気迫に満ちた演技に引き込まれていた。
本多さんは巻高校を卒業し、20歳で役者を志した。劇団AUN(吉田鋼太郎主宰)に入団して以後、10年ほどシェイクスピア作品を中心に活動を続けながら映画やCMにも出演。昨年は政府拉致問題対策本部主催の舞台「めぐみへの誓い一奪還一」に出演、街頭で拉致事件被害者奪還を呼びかけ署名活動を行っている。
ひとり芝居は三島由紀夫で3作品目。2022年に東京で初演し、23年秋に京都で一夜限りの上演。ことし3月に東京で再演した。今回の公演は13日(日)に燕市で開かれる吉田中の1980年卒の同学年の還暦になる同窓会がきっかけで実現した。
舞台を書斎、道場と屋外、ジムの3つの空間を行き来して演技し、三島の遺した言葉を抜き出し、青年時代から三島事件に至るまでの半生を描く。ジムではトレーニングを繰り返すたびに重りを増やしたバーベルを担いでスクワットを行い、心と体の両方を鍛え上げていく三島のストイックな生き様を再現。空手や剣道も披露した。
本多さんは俳優業の一環で初めたフルコンタクト空手の黒帯。ボディービルで鍛え上げた体はとても還暦とは思えない。ラストは三島由紀夫が自決した1970年11月25日の三島事件。陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地でバルコニーから制服に鉢巻きを締めて白手袋をつけた三島由紀夫が自衛隊員に呼びかけ声明「檄(げき)」を放った。
ふるさとでの公演ということで、ネイティブと変わらない流ちょうな方言で話すパートもあった。
本多さんはほとんどの同級生と45年ぶりの再会。さすがに本多さんも顔だけでは同級生が誰なのかすぐにわからなかったが、名前を聞くと記憶がよみがえり、互いに声を上げて再会を喜び、懐かしんだ。同級生はとにかく「素晴らしかった」のひと言で、中学生時代から想像できない本多さんの姿に驚き、感心していた。
本多さんは役づくりなどを通して三島由紀夫にひかれた。来年は三島由紀夫生誕100年の節目でもあり、来場者には「ぜひ三島先生の素晴らしい文学を読んでほしい」と求めた。
作品については「有名な人を独り芝居でやってはどうかということで三島由紀夫を取り上げた。ちょっと創作も入れたので、どうかなと思われるシーンもあると思うが、三島由紀夫が結成した“楯の会”人も何人も東京で見てくれ、三島先生がタイムスリップしてよみがえったって言ってくれた人もいた。非常に励みになった」と話していた。
戸隠神社(燕市宮町)の星野和彦宮司(73)は、50数年前の記憶を重ねて鑑賞していた。三島事件当時は東京の大学で1年生だった。「夜、帰って来てテレビでニュースを見て大変なショックを受けるとともに、それ以降、この日までもう50数年、毎年、三島事件のあった11月25日になると、三島由紀夫・森田必勝(楯の会メンバー)の両烈士(れっし)の慰霊祭をずっとやってきている」。
「私は楯の会に入れなかったけど、ひとつ上の先輩は何人か楯の会に入っていた。楯の会のメンバーとは今も交流している」。三島事件が終わっても考え方は何も変わっていない。
クライマックスの檄は「私も読んでいるが、リアルな形で本多さんがやっていただき、非常に感銘を受けた。涙が出た」。「三島先生が目の前にいるような感じだった。すごいなと思った。まさに三島先生が乗り移ってるんじゃないかという気がした」と迫真の演技を絶賛した。
また「同時に今、何で憲法改正、憲法改正って言っているのか。その理由、意味がこの舞台でわかると思う。なぜ今の憲法かおかしいのか、変えなきゃいけないのか、わかる」と言い、憲法改正の必要性を理解するためにも自身の立場から「ぜひとも多くの方から鑑賞してほしい」と話していた。
12日の公演は午後3時から。チケットは一般4,000円、学生2,000円、高校生以下は無料。予約問い合わせは電子メール「mishima.shokon@gmail.com」か電話「03-6411-6260」へ。
■独り芝居「三島由紀夫 招魂の賦」 | 一般社団法人 日本演出者協会
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