公募で選ばれたアーティストが新潟県新潟市秋葉区の小須戸地区で地域資源をリサーチし、町屋など特色ある空間で作品を制作、展示するアーティストインレジデンスを中心としたアートプロジェクト「小須戸ARTプロジェクト2024」の成果発表会が10月5日から11月14日まで小須戸地区で開かれており、ことしは3人の若手作家が滞在制作に取り組んだ成果を展示、公開している。
大川友希さんが「小須戸縞機業の織物産業と地域の歴史」、光延咲良さんが「鍛金の職人技と匙(さじ)日記」をテーマに成果を発表、森健太郎さんが「新潟と小須戸の食文化」をテーマにリサーチの成果を発表している。
大川さんは2012年に愛知県立芸術大学膨刻専攻卒業。古着や布を素材に記憶や時間をテーマに作品を制作。近年は、古着を用いたワークショップや地域の歴史や交流から作品を制作。奥能登国際芸術祭2020+、瀬戸内国際芸術祭2022に出展している。
今回は地元の人たちから作品に使う古着の提供を求め、約1千枚が集まった。空き家の「大川前4倉庫」の空間にその古着をたたんで積み重ねて床から天井まで届く柱のようにしたインスタレーションを制作した。
子どもと一緒に訪れたお母さんは、提供した古着を探した。息子に「ママ、全部、覚えてるよ」と話して家族で過ごした時間を思い出し、亡くなった父のワイシャツも作品の一部になっているのを見て目をうるませた。古着に袖を通した人の時間や記憶も積み重なっている。
光延さんは福岡県久留米市出身。2023年に長岡造形大学大学院を修了し、今は長岡造形大で教務補助職員として勤務。鍛金技法による人とかかわるための「うつわ」をテーマに、マルシェや芸術などで作品展を行う。
森さんは福岡県北九州市生まれ。大学卒業後から現在に至るまでアート活動が社会にもたらす価値について考察と実践を行っている。現在は、福島県の原発被災地域を拠点に、人々が生活を再建するこの地で合意され、形作られるアートの形について考察している。今回は来年の成果発表に向けて「町屋ラボ」でリサーチレポートの展示を行っている。
このアートプロジェクトは、「水と土の芸術祭2012」の開催を契機に13年に「薩摩屋ARTプロジェクト」、2014年から「小須戸ARTプロジェクト」として毎年、開かれている。