「静かなる引き際」鈴木力市長の決断に寄せて (2025.4.1)

燕市の顔として長きにわたり市政を担ってきた鈴木力市長が、今期限りでの引退を表明した。しかも、2026年4月22日の任期満了を待たず、本年10月22日をもって市長を辞職し、政界からも身を引くという。3月26日の記者会見で語られたその決断は、市民にとっても、長年の彼の働きを見守ってきた県内外の関係者にとっても、大きな節目を感じさせるものであった。

鈴木氏が初めて燕市の舵取りを担ったのは2010年4月。当時、全国的に地方の少子高齢化や財政難が深刻化する中での船出だった。それから4期、約15年にわたって市政のかじを握り続けたその道のりは、決して平坦なものではなかったはずだ。それでも、鈴木市長は「地に足の着いた改革」と「市民との対話」を掲げ、地域に根ざした行政運営を徹底してきた。

中でも評価されるのは、燕市の基幹産業である金属加工業への支援策と、観光振興への積極的な取り組みである。地場産業の海外展開を視野に入れたプロジェクト、地域ブランドの構築、若者や女性の就業促進など、多面的な施策が少しずつ芽を出し、市民の間にも「市が変わってきた」という実感が広がっていた。

また、新型コロナウイルスの感染拡大時には、市独自の支援策や情報発信でスピード感のある対応を見せ、市民の不安を最小限に抑える工夫が随所に見られた。困難な時代を市民とともに乗り越えてきた姿は、地域リーダーとしての責任感と覚悟を強く感じさせるものだった。

しかし、どんなに有能なリーダーであっても、いつかは「去り際」を選ばなければならない。今回、鈴木市長は「新しい視点を持った人に託したい」と話し、政界からも完全に身を引く意向を示した。現職にとって、任期途中での辞職は決して軽い決断ではない。それでもなお、次代へのバトンタッチを円滑に進めるため、自ら早めに身を引くというその姿勢には、政治家としての成熟と誠実さがにじむ。

市政の現場において、長くトップに立つ人間はしばしば「変わらぬ存在」になる。しかし、時代が変わるにつれ、行政にもまた新たな発想と価値観が求められる。そうした中で、あえて「立つ鳥跡を濁さず」と静かに去ることを選んだ鈴木市長。その決断は、地方政治における理想的な「引き際」のあり方を静かに示しているようにも思える。

今後、鈴木氏は公の場から退くことになるが、その残した実績や姿勢は、後進にとって貴重な道しるべとなるだろう。そして、これから新たに市政を担う人々が、鈴木市長の描いた「市民本位のまちづくり」の理念をどう受け継ぎ、どう発展させていくか。燕市は次のステージに向かおうとしている。

鈴木市長、長きにわたるご奉仕に心からの感謝を。そして、これからの人生にも、変わらぬ幸多からんことを願ってやまない。

（文とイラスト・ChatGPT）