新潟県燕市のものづくりの魅力をデザインの力で発信する「ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール2026」と「若monoデザインコンペティション燕 vol.10」の表彰式が25日行われた。ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクールでは、遠藤商事(株)の「TKG18-8ステンレス スリットボール」がグランプリの経済産業大臣賞に輝いた。

ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクールは、燕市産品のデザインの高度化と振興を図ろうと1977年に始まった「にいがた県燕市物産デザインコンクール」を前身に毎年、開かれている。
金属洋食器や金属ハウスウェアをはじめとする燕産地発の製品について、新規性、革新性、審美性、機能性、市場性、社会・環境性などを専門的視点で評価し、産地としての競争力向上と持続的発展を目指す歴史あるコンクール。第49回となった今回は、43社から70点の出品があった。
一方、若monoデザインコンペティション燕は、高度な技術を持つ燕市内企業と、革新性やデザイン性に優れた学生・若手デザイナーとのマッチングを図り、付加価値の高い新製品開発につなげる取り組み。今回は74件の応募があり、3作品が大賞に選ばれた。

両方のコンクールを主催する新潟県燕市物産見本市協会の会長でもある佐野大輔燕市長は、「デザインは見た目の美しさだけでなく機能性でもあり、それが製品の付加価値につながる。燕市としても県内外、そして海外に向けて燕の商品をしっかりPRしていきたい」と述べた。若monoデザインコンペティションについても「せっかく生まれたデザインが商品化につながってほしい」と期待を寄せた。
ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクールの受賞は、グランプリ1点、準グランプリ2点、優秀賞2点、審査員特別賞8点、若monoデザインコンペティション燕は大賞3点を表彰した。
受賞者を代表してあいさつした遠藤商事(株)の遠藤茂社長は、受賞製品「TKG18-8ステンレス スリットボール」に誕生にに至る開発の経緯を説明した。

従来の金属製ボールは、ステンレス板をパンチングで丸い穴を開けてからしぼりで成形したため、その過程で材料が引っ張られて変形し、水切れが悪くなる課題があり、販売店やユーザーからも改善を求める声が多く寄せられた。
そこで同社は従来とは逆の工程に挑戦した。ボウル状にプレス加工したあとで穴を開けた。難易度が高く苦心したが、高い評判を得た。しかし、直径が30センチより小さくなると加工が難しくなる問題に直面した。
そこで着目したのが「丸い穴」ではなく「スリット」だった。「3本線の水切りをたくさん付けたらどうだろう」という意見があり、実際に試したところ、従来よりも水切れが良くなり、さらに表面を可能な限りなめらかに仕上げることで、食材が引っかかったり、ちぎれて異物混入につながったりしないよう工夫した。

こうした試行錯誤を重ねて「TKG18-8ステンレス スリットボール」が生まれ、2025年4月に発売。「実際にさわって試してもらわないとわかりにくい商品でもあった」が、1年たってようやく機能性の高さが認知されてきたと言う。
そのなかで今回の受賞は大きな励みになり、「良いものができたと思っていたが、受賞には本当に驚いている」と遠藤社長。「この製品はデザイン性よりも機能性を形成して作った」と強調した。
自社ブランド製品に対する考え方として「常にシンプルで使い勝手のいいものを基準にする」という姿勢があるとし、今回の受賞を通じてそのものづくりの方向性が評価されたことに手応えを感じた。「これからもユーザーさんやお客様の意見を大切にしながら、より良い製品を作っていきたい」と話した。
若monoデザインコンペティション燕 vol.10では、デザイナーの会社員竹内大喜さん(25)=大阪府大阪市=の「chokorin」、デザイナーの会社員山田彩香さん(27)の「KOISHI」、学生の筒井徹心さんの「Sumimi」がそれぞれ大賞を受賞。欠席の筒井さんを除く2人が作品を紹介した。
竹内さんのテーマは(株)宮崎製作所の「食卓やキッチンを彩る花器」。花を飾ることに慣れていない初心者でも気軽に植物を取り入れられる一輪挿しを目指したと説明した。

人がちょこんと座ったような造形にすることで、「花が枯れてしまっても失敗ではなく、その過程も含めて楽しめるようにしたかった」と話し、花を飾ることへの心理的なハードルを下げる柔らかな提案であることを強調した。
山田さんも同じテーマに取り組んだ。「KOISHI」は磁力で冷蔵庫や金属の壁面に取り付けられるマグネットタイプの花器として提案。少人数世帯やミニマル志向の暮らしを意識した。

「無機質になりがちなキッチン空間を少し彩り、料理中の気持ちも上げられるようにした」と狙いを語った。垂直面にも水平面にも使える点や、複数を並べた際の見え方も工夫したと言う。
また、学生の筒井さんは(株)新越ワークスの「便利さ、楽しさ、斬新さの中に、付加価値としてのストーリー性があるアウトドア製品」をテーマに、小さな炭がわずかに赤く光りながら呼吸しているように見える姿を静かに眺める「Sumimi」で受賞した。
講評で審査委員長の商品開発プロデューサー・アドバイザー吉川美紀さんは、売れる商品には「個人の悩みや欲しいものに根差した需要」が重要だとし、今回の受賞作についてもそれぞれが具体的な課題や生活場面に応える提案になっていると評価した。

若monoの2作品についても「商品化できるかどうかは適正価格との勝負だが、時代に合った視点と遊び心がある」と期待を示した。
半世紀の節目を前にした49回目のコンクール。機能と美しさを兼ね備えた製品群と、若い発想から生まれた新しい提案が、あらためて燕のものづくりの厚みを印象づけた。それぞれ受賞は次の通り。




