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天井が高く、太い柱はススなどで黒い。民家の中にウマを入れる小屋があり、現代なら駐車場。天井にはウマ用のわらじが当時のままかけられていた。台所にはご飯を炊く釜も当時のまま置いてあり、生活に欠かせない水は、川の水を草や石でろ過して引き込んである。 地元の人の思い入れが強い建物であり、自身のライフスタイルの集大成をその古民家に見た。「あのような家には日本人が営んできた生活がある。単に住めるようにするのではなく、元の形に戻そうと考えました。するとどんな暮らしをしてきたがわかってくるんです」と話す。 生活様式がわかれば、人間の暮らしは自然と敵対するのではなく、共存していかなければならないことがわかってくるという。 「人間が一番偉いと思っていかに自然と隔絶するかばかり考えている。自然から受けている恩恵を全部、人間がつくったと勘違いしている。もし、川の水を飲料水として利用するなら川の水は汚せない。ありがたさを忘れてしまっているんです」。 この貴重な作業を独り占めするのでなく、一人でも多くの人と分かちあいたいと考える。自身はプライベートルーム一つあれば十分。ほかのスペースはすべて開放し、都会の若者にも再生作業を体験してもらおうと、アウトドア雑誌を通じて古民家再生の手伝いを募集した。 関東圏の若者をはじめ、遠くは北海道や山口県からも応募があり、雑誌の編集者も含めると、ざっと延べ100人が作業に携わっている。初体験の作業ばかりで、技術的には拙いが一生懸命だという。 現在、中はだいぶきれいになり、あと半年くらいで完成の予定。土間には、当時の精巧な技術で造られた扉がテーブルに生まれ変わり、隅っこには遠藤さんが使う鍛冶場も作った。 完成した暁には、紙漉(かみすき)や染物などのモノづくりの体験の場として、また、地元の人たちからいろいろな話を聞いたりと、自由に使える場にと夢を描く。 遠藤さんは「生活の本当の合理性や機能性は、昔の生活の中にあります。そしてその生活をどう遊ぶかだと思います。モノづくりも何か形が出来ていくというのはうれしいもので、生きていることを実感します。この古民家ではさまざまな可能性に挑戦していきたい。でも、私のことだからいきなり考え方を変えちゃったりするかもしれませんが」と笑う。 ■Copyright (C) kenoh.com Allrights Reserved. |
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