池田君は武雄市では、たけお競輪、そして民間移譲で揺れた市民病院でらつ腕をふるった。ツイッターだったと思うが、樋渡啓介市長は池田君を「武雄のエース」と表した。内部の人間ではないので、地域経営課での池田君の仕事ぶりを評価できる立場にはないが、池田君が職場でいかに重要な存在であったかは、有志によって開かれたサプライズパーティーを見れば明らかだ。
昨年暮れだったと思うが、三条マルシェ実行委員会のメンバーから、池田君とお別れのサプライズパーティーをやろうという声が上がった。年が明けてすぐ、打ち合わせ会議が始まった。万が一、企みが池田君にばれないようにと、池田君の名前と開催日の3月9日にかけて作戦のコードネームは「IKD3.9」だ。
作戦の制作期間は実に2カ月余り。ビデオレターを作成したり、カラオケ店でAKB48の踊りを練習したり、曲を作って歌ってCDを作ったり、池田君の顔写真をプリントしたTシャツを発注したり。樋渡市長と電話でつなぐというアイデアも。テーマは自分たちが楽しむこと、そしておとなの本気を見せてやることだ。
参加者は市職員を中心に三条マルシェなどで池田君とかかわった仲間たち。これっぽっちも企みを知らない池田君は、武雄市へ帰る前に同僚と4人で温泉に泊まってゆっくり過ごそうという“設定”で「嵐渓荘」へ。池田君が温泉からあがって大広間の戸を開けると、そこには50人近くがずらりと席を並べ、いっせいにクラッカーを鳴らすという段取りだ。
大広間に向かう時点で池田君は数人が待ち構えているのではと思ったらしいが、想像をはるかに超えた大人数に目を白黒。訳がわからぬまま上座に座らされると、国定勇人三条市長からのビデオレターの上映。実はこれは“振り”で、それでは乾杯という段で、まさかの国定市長登場に、驚きを通り越してへたり込む池田君。「本当に驚くと足に力が入らなくなるんですよ」とあとで目を丸くして話していた。
サプライズ的なイベントが次々と繰り広げられた。ひと通り落ち着いたところで廊下に出ると、うつむいている池田君。「男は人前じゃ泣かんとです」と言いながら涙が止まらない九州男児だった。