振り返ると「やっぱり音楽しかやってきてなかった」。再びひとりで曲をつくるようになったが、それで飽き足りずに発表の場を求めて地元のSATO'S BAR=三条市本町2=などに頼んで出演させてもらうようになった。
そのうちに中條さんの音楽活動を知る人が増え、ライブ出演に声をかけてもらえるようなった。曲がたくさんたまり、形にして残したいと思ったときにタイミング良く五味さんと連絡がとれ、五味さんはソロアルバムのプロデュースを申し出てくれた。
昨年11月中旬から約1カ月がかりで自宅で録音。その音源を五味さんに送ってミキシングやマスタリングの作業を行ってことし5月22日発売。1,000枚を自主製作した。
ジャケットのイラストは、アルバムのなかでギターも弾いてくれたアートディレクターでもあるマザーネイチャー=三条市旭町1=の平田純也さん(29)に依頼。デザインは佐野祐見さん(29)も担当した。
アルバムのタイトルにした“サンピラー”は太陽柱のことで、北海道など厳寒の地で見られる空に光が柱のように垂直に伸びる幻想的な現象。冬を題材にと考えていた。言葉の音の響きが“賛美歌”に似て「自分のイメージしたいことにリンクしました」。
sphereでは辞書と首っ引きで英語詞を書いていた。今回のアルバムに収録したのは三条に戻ってから書いた曲で全部、日本語。曲づくりは、まずメロディーが浮かび、それにコードをはめ、あとで詞をのせる。Aメロ、Bメロ、Cメロ、転調といった国内の音楽にありがちな構成や形式にはとらわれない。「いかにシンプルでいいメロディーをつくるか。わたしの曲は、AメロとBメロしかないと思います」。
アルバムのリリースが自分に変化をもたらした。今までは心の問題もあり、音楽をずっと続けようという信念をもつことができなかった。ライブにも抵抗があった。アルバムを聞いた人からいろんな反応を聞くうちに「ずっとこれをつくっていこうって、アルバムができて初めて思いました」。
そして「自分のできることを初めて感じた」。自分の存在意義、曲をつくることや歌うことの意味を信じることができるようになり、内向きになっていた心を解放するひとつの壁を超えたようだ。
小説を書いていた時期もあり、「作家が小説を書いて残していくのと同じような感覚で、いい作品を残していきたい。別に誰のためとか、東京にいたときから歌手になりたいとかいろんな夢はあったけど、いろんなことがあって、それ以上に大切なことがあることを思い知ったので、自分が納得いく形でずっとできる限り続けていればと思います」と話している。