真宗大谷派三条別院=三条市本町2=は、2015年5月の宗祖親鸞の七百五十回御遠忌法要を告げる駒札を1年前に参道に立てる。駒札は鎚起銅器の老舗、玉川堂=燕市中央通り2=が世界で初めて鎚起の技術で作り、題字はダウン症の書家、金沢翔子さん(28)が揮毫(きごう)するという壮大なプロジェクト。三条別院は、このほど完成した金沢翔子さんの書を16日、玉川堂に届けた。
玉川堂が製作する駒札の大きさは、縦170センチ、幅110センチ。金沢翔子さんの作品は原寸大で、ほぼ畳1枚分の大きな紙に御遠忌法要の名称と法要の日程などを書いた。
玉川堂では、銅板に膨らみをつけてこの原本を忠実に再現する。作業は40年のキャリアの彫金職人が中心となって手掛ける。来年1月下旬から2月上旬ころに打ち始め式を行い、地域人たちや子どもたちから銅板の打ち始めを行う計画で来年5月までに完成させ、立柱式を行って参道前に立てる。
三条教区宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌実行委員会広報部会主査の渡辺智龍さん(37)らが玉川堂を訪れ、金沢翔子さんが書いた題字を披露し、玉川堂の玉川基行社長に手渡した。
揮毫を前に金沢翔子さんは11月1日、三条別院で席上揮毫と母の泰子さんを講師に講演会を行っている。三条のイメージを揮毫に込めたいと、あまり時間を置かずに作品を仕上げたと言う。
自身もずっと書を続けている玉川社長は「とにかくバランスが素晴らしい。勢いがある」と驚き、ため息をついた。「かすれもすばらしく、難しいとは思いますが、できる限り忠実に再現したい」と気を引き締めた。
材料の銅板もこれほど大きな定番商品はないため、特注を仕入れるしかなく、予想以上に経費がかかってほとんど利益が出ない仕事になったが、玉川社長も同じ真宗大谷派である燕市・専養寺の檀家総代でもあり、宗祖親鸞の遺徳への追慕と鎚起銅器の老舗としての誇りを込めて制作する。
渡辺智龍さんは、「金沢さんのすばらしい書体。とくにあのかすれをいかに玉川堂の世界を魅了する技術によって駒札になるか、わたし自身、わくわくしている状態」と期待を膨らませていた。