そして20歳から5年半、「劇団トマト座」に所属した。当たり役だった「ピノッキオの冒険」のピノッキオ役をはじめ、「オズの魔法使い」のドロシー、「冒険西遊記」の三蔵法師など主役も数多く務め、全国各地を回った。もちろん三条市や燕市でも公演している。
舞台のセンターに立つ華やかな姿とは対照的に、岡田さんの心は追い詰められていった。とにかくけいこ場にいるのが楽しかった。毎日のように午前7時から午後10時までけいこ場で過ごした。ふつうに練習する多くの団員にとっては、うとましい存在だったとあとになって思う。
「使えねーなー」と団員をののしることもあり、高慢だったことを反省させられる。劇団ではいつも自分ひとりになっていたが、年に一度のフェスティバルでは、ふだん大事にしてこなかった団員みんなに初めて頭を下げて助けてもらった。
心のバランスを崩し、劇団を辞めて三条市出身の団員と結婚して三条市へ移った。1年ほどして夫の転勤で村上市へ引っ越した。結婚、妊娠を期に引退した途端に張り詰めていたものが切れて体調不良になったが、しだいに心の平穏を取り戻した。
一昨年暮れに三条市で開かれた「たまりば市」に消しゴムはんこ作家として出店。昨年から再び三条市へ移り住み、今は耳ツボジュエリーで三条マルシェなどに出店し、新築中の家が間もなく完成したら自宅サロンも開く計画だ。
同時に芝居にかかわりたいという気持ちも膨らみ、それが高校演劇部の指導という形で実現した。今度は自分が舞台に立つのではなく、役者を育てたいと思うようになった。
「結果的に若手の芽を摘んできたんじゃないかと思う」と劇団員時代を反省。「当時の団員が今のわたしを見たらびっくりすると思う」と笑う。今は指導していることが楽しいと言い切る。「あいさつができない、時間が守れない。そいうことからきっちりすると芝居もきっちりしてくる。結局、自分との向き合い方だから」。舞台に立っていたときには感じなかった新たな喜びを味わっている。
使命感を感じるようにもなった。「指導を続けることで、もっと子どももおとなも演劇にふれる機会が増えれば、それはわたしが新潟へ来た意味なんじゃないかと」。「がっつり劇団をやってみたい」が、主宰するのは金銭的な心配もしなければならないので「誰か劇団をつくってくれないかな」と笑う。
「わたしは、お客さんが席で“良かった”って言っているのを、いちばん後ろに座って見ていたい。誰か演技指導で雇ってくれないかな」と、また笑った。
演じる楽しさを忘れたわけではない。昨年暮れには知人に誘われて絵本の読み聞かせにも挑戦した。機会されあれば人前に立ちたいと思っており、近い将来、岡田さんの演技やパフォーマンスを見られるはずだ。演劇指導に興味のある人は岡田さん(電話:070-6674-7221)へ。