消費税の先送り問題
五位野和夫氏:今の消費税8%でも消費を冷え込ませているということは、最近の報道でも承知かと思う。増税は、さらに消費を冷え込ませるのは間違いない。経済成長を止めることにもなる増税はきっぱりと中止すべき。
経済の成長戦略ということなら、この大企業の285兆円と言われる内部留保の一部を使って非正規雇用から正規雇用へ、賃上げや適正な下請け単価での下請け企業への発注を行って、国民の所得を増やす、所得の底上げを図って税収を増やしていくことで国家全体の所得の底上げを図ることが必要。
あわせて各自治体、市町村の資源、商業、農業、工業、大学、そして人材を生かした地域での地産地消を進めて地域にお金が回るようになることに支援していくことが大事。
原発も含め大型の開発事業や公共事業は、始まりは一時的に経済効果が生まれるが、終われば経済効果の落ち込みは激しい。食、医療、福祉、農業、観光などに密着した持続的な分野へと経済活動をシフトしていくことが持続的な雇用にもつながる。
細田健一氏:安倍政権のの経済政策は、それなりに良い兆候がでている。県央地区でも有効求人倍率が大きく改善しているし、新潟の倒産件数は2年前にくらべて25%以上、減少した。全国の賃上げ率は15年ぶりに2%以上という高い数字が出た。
ただ、地域の中小企業の声を聞くと、まだまだアベノミクスの成果はこっちまで来てないとのこと。これは消費税の増税を延期して景気回復を第一にするという総理の決断を支持したい。
できるだけ企業のもうけを大きくして、そのもうけた分を投資や賃上げに使う環境をつくっていくことが重要。例えば法人税の減税、設備投資の減税、ものづくりの補助金などで中小企業の投資をうながすような政策が必要。
企業のコスト削減のために安価で安定的な電力供給をつくることも必要になる。いろいろな政策を総動員して景気回復をまず第一にやるが、社会保障の負担もあるので、消費増税は中長期的には行わざるを得ないと考える。
渡辺英明氏:消費税増税の先送りは当たり前であり、むしろ5%に戻すべきと考える。そもそも消費税は欠陥税制であり、中小零細企業泣かせの売上税。少なくとも納税義務の免除は売上高3千万円以下、簡易課税制度は売上高5億円以下の昔に戻すべき。
輸出企業に対しては仕入れ時にかかるとされる消費税の総額を払い戻す輸出戻し税制度を抜本的に変えなければならない。
経済成長主義という言葉に懐疑を覚えているので、経済活性化という言葉を使うが、わたしの経済活性化策の目玉は脱原発を宣言し、エネルギー政策を転換すること。再生可能エネルギー産業へと集中投資を行う。新しい次の日本の産業をリードする産業の育成は、経済活性化に不可欠。
富裕層への課税強化で財源を生み出し、若者たちの就職支援と子育て支援に充てる。具体的には職業訓練や就職相談員の充実、非正規労働者の均等待遇実現と社会保障への加入を促進する。最低賃金を千円へ引き上げる。
これらの政策により若者たちの雇用と生活の安定化が図られ、これに賃金の上昇が加われば、日本の国内生産の6割を占める個人消費が活発化する。それは経済活性化につながると考える。
鷲尾英一郎氏:社会保障の今の状況、今の少子高齢化の状況を考えると、財源をどこかで担保しなければならないというのが、ひとつの責任ある議論と思う。
経済指標がこれだけ悪化するなかで増税を強いるのは非現実的。2017年4月までにどのように政策を打ち、経済にあまり影響、負担をかけない形で消費再増税にもっていくという話になると、今、円安が進み過ぎてしまって随分、企業活動に影響を与えている。
一方で円安になるとふつうは経済学的にも輸出が伸びる生産拡大効果をもって中小企業への波及があるということだが、残念ながら輸出型大企業であっても海外に工場を移転しているので、なかなか円安で生産拡大の効果も望めない。
どうしていくかとなると、円安対策として防衛的な予算措置を行い、中小企業を下支えするとか、ものづくりもそうだが、地域には人がいるので、人と人を結びつける、そういうビジネスにもお金が回るようにしていかなければならない。
ものづくり補助金は非常にいいが、金融機関の融資が前提なので、そうじゃない企業はうまく活用できていない。エンジェルファンドのようなものをつくって、いい形でお金を別の形で流していくことも必要。
法人税率の引き下げもあるが、中小企業にとってみたら社会保険料を少しでも引き下げていくということも検討すべきと思う。